黄金世代、夢の行方BACK NUMBER
小野伸二、代表への想いも募る……。
稲本の運命と交錯したJ復帰の現場。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byKeisuke Koito/PHOTO KISHIMOTO
posted2010/04/02 10:30
清水は最も「自分が活きるポジション」で小野を採用。
清水は、小野に格好の復活の舞台を与えてくれた。
今季から4-3-3のシステムを採用し、小野はインサイドハーフのポジションを任されている。バルセロナで言えば、シャビやイニエスタに当たるわけだが、最も「自分が生きるポジション」でもある。
「別に、シャビとかイニエスタは意識していないし、彼らと同じようなことをする必要もないと思っている。清水の場合、全員攻撃、全員守備がモットーなので、そのやり方を踏まえた上で自分の役割として、攻撃のアクセントを付けるとか、前に出てフィニッシュに絡むプレーは、しっかりやっていきたい。それが出来ないと、自分がそこで起用されている意味がないんでね。まだ連携面とかで課題は残るけど、試合をこなしていけばどんどん良くなると思う」
小野は、J復帰後ますます調子を上げてきているが……。
3節の神戸戦、稲本と対戦した4節の川崎戦と試合をこなすごとに、連携面も動きも良くなっている。特筆すべきは、動きの質と量だ。元々、運動量の多いタイプではなかったが、走れるようになった分、プレーの独創性や精度と相俟って、やけに目立つ。代表のエースである岡崎慎司の存在が霞むほどだ。
「今、調子いいっすよ。それは、合宿から段階踏んで体作りもできたし、ケガもないからじゃないかな。まぁおっさんなんで90分フルに頑張っちゃうともたない。落とすところは落としてメリハリをつけてプレーしている。最悪、90分ダメなら交代すればいいやって思っているんで、その考えもプレーにプラスに働いているのかも。でも、今のポジションは、動けないとやっていけないポジションだからね。このくらいやれて当たり前というか、もっとやらないといけないと思っている」
小野が自覚しているように、長谷川健太監督の要求も高い。
「今は、まだ伸二に恐さがない。チームに慣れてくれば、もっとチャンスを作れるし、もっとシュートも打てる。これからですよ」
ピッチ上でさながら“王”のごとく存在感を示す。
シュートが巧く、得点能力が高い選手だけに期待は大きいが、小野は段階を踏んで自分の良さを発揮していくタイプ。清水でも出しゃばらず、キャプテンの兵働昭弘の妨げにならないように気を使っている。
だが、ピッチでは常に主役だ。
小野がボールを持つと選手が一斉に反応し、素早く動き出して攻撃に転じる。その存在感は、一選手の影響力を越え、まるで王のような絶対的なものを感じさせる。
「まだまだっすよ。ゴールもないしね。もっとシュートを打ちたいし、もっと決定的なゴールシーンを作りたい。けど、俺の場合ゴール前というかアシストのひとつ前のパスが多いんでね。ただ、川崎戦のようにシュートチャンスは増えては来ているんで、早く決めれればうれしいけど」