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青天霹靂のバレンタイン監督就任で、
来季のレッドソックスはどう変わる!?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2011/12/13 10:30
12月1日、ボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイパークで新監督としての記者会見を開いたボビー・バレンタイン監督。「選手や球団経営陣とコミュニケーションを密に取り、私から組織の中に入っていきたい」と抱負を語った
「膿」を出し切るには厳しいボビーは適任だが……。
では、なぜレッドソックスは個性の強いバレンタインを監督に求めたのだろうか?
前任のテリー・フランコーナ監督は、「性善説」に立って指揮するタイプの監督だった。選手を大人として扱い、選手の自主性を尊んだ。
しかし、「自由」を履き違えた選手たちがいた。シーズン終了後、大きな話題になったのは非番の先発投手が試合中にビールを飲んでいたことだ。
ベケット、ラッキーにレスター。飲酒を目撃したチームメイトの士気に影響した可能性は大きい。
もしも、レッドソックスがポストシーズンに駒を進めていれば、飲酒も問題にはならなかっただろう。しかし、敗戦によって「膿」が外に出てくるようになった。
経営者サイドは、こうした淀んだ空気を一掃したいと考えたはずだ。そこで選手批判も厭わない、厳しいタイプのバレンタインを招くことに決めたのだろう。しかしそれはリスクを伴う決断だったと思う。
メディアとの「ラブ&ヘイト」は選手との軋轢を呼ぶ。
そのリスクとは、どんなものだろうか? まずはメディアとの関係だ。かつて「スポーツ・イラストレイテッド」誌では、バレンタインの特集を組み、本来は望んでいない国(日本のことだ)で、皇帝となった男……と辛辣な表現をしたこともある。
基本的にメディアはバレンタインに対しては厳しいスタンスをとってきた。その姿勢を変えることはないだろう。
バレンタイン側から見れば、メディアとのアクセスは良好ではあるが、それは決して蜜月関係を指しているのではなく、「ラブ&ヘイト」、愛憎半ばする関係だ。
メディアが書きたてれば、選手も辟易してくる。その関係がどう推移するのか。
また、ムード作りはうまいのだが、打線の入れ替えも好きなタイプの監督なので、選手との軋轢、衝突は避けられないだろう。