MLB東奔西走BACK NUMBER
メジャーに挑む青木、中島、川崎……。
日本人野手が学ぶべき“常識”とは?
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2011/12/10 08:01
2004年にカージナルスで打率.291の成績を残し活躍した田口壮。だが、彼も入団当初は、メジャー特有のムービングボールになかなか対応できず、苦悶の日々を送っていた
今年7月のことだ。メジャーリーグからちょっと離れ、ネブラスカ州オマハで行なわれた日米大学野球最終戦を取材させてもらった。言うまでもなく日本チームは、ドラフト指名候補の有望選手ばかりで構成され、実際チームに選抜された4年生10人のうち6選手が今年のドラフトで指名を受けている。
その試合を観戦した感想は、日本の投手たちがアメリカの有望大学選手と対等に渡り合っている一方で、攻撃陣がどうしても物足りないというものだった。結果として日本は6対2でこの試合に勝利したのだが、安打数は米国チームを下回り、犠打数は日本が4に対し米国はゼロだった。象徴的だったのが、3回に失策で出塁した無死二塁の場面から送りバントとスクイズで日本の先取点。5回に集中打が生まれて4点を奪う場面もあったが、やはりその戦いぶりは甲子園で強豪校に挑む無名高のように思えてしまった。
メジャーの日本人選手への評価は“投高打低”。
もちろん試合巧者という意味では、日本のチームの方が上だったことになるのだが、日本の選手たちが個々に米国に来てプレーする上での実力という面ではどうだろうか。
実際、米国チームの関係者に日本チームの印象を聞いてみたところ、彼らが口にした名前は投手ばかりだった。何となく日米の相関関係の現在の縮図を見せられたような思いを強くさせられた。ひどく回りくどい紹介になってしまったが、ここ最近のメジャー球界における日本人選手の評価はすっかり“投高打低”に落ち着いてしまっている。それだけ野手がメジャーで成功するのが難しい、ということの裏返しでもある。
メジャーに近い統一球で顕著になった、打率の低下。
大学野球ばかりか、今年のプロ野球も厳しい現実が表面化した。メジャー球に近い低反発球に統一したことで、大幅な打力低下に陥ったのだ。全球団平均打率が2010年は.269だったのに対し、今年は.247まで下降。総本塁打数も昨年は1605本だったのに、今年は939本まで落ち込んでいる。さらに3割打者が昨年の27人から今年は9人まで激減していることからも、一部例外はあっても、ほぼすべての打者が統一球の影響を受けてしまっていることが分かる。