MLB Column from USABACK NUMBER
MLBが大規模な改造計画。
NYとボストンが他地区に引っ越し?
text by
李啓充Kaechoong Lee
photograph byGetty Images
posted2010/03/20 08:00
昨季9月26日、松坂大輔と松井秀喜の対戦。彼らはMLBの「最強」の2チームに所属でしのぎを削ったことになる
バド・セリグ・コミッショナーが14人の委員からなる「改革特別委員会」を組織したのは昨年12月のことだった。MLBをもっとおもしろくするためにはどうしたらいいか、ゲームのあらゆる側面について「聖域なき改革」を討議するのが使命である。
主要メンバーは監督・GM代表であるが、この委員会で現在もっともホットな議論となっているのが「流動地区制」である。各地区の所属チームが固定されている今の制度を改めて、毎年、地区間でチームを入れ替えるというアイディアである。
なぜこんなアイディアが議論の対象になっているのかというと、それは、ヤンキースとレッドソックスが強すぎるからである。
開幕前から結果が見えているア・リーグ東地区の現状。
1リーグ4チームがプレーオフに進出する現行制度が始まったのは1995年であるが、この15年間、ア・リーグから進出したのべ60チームのうち、ヤンキースとレッドソックスが出場した回数はあわせて23回。なんと、38%を占めるにいたっている。
しかも、ヤンキースあるいはレッドソックスがワイルドカードでプレーオフに進出したのは15年中9回。ワイルドカード制は「いろいろなチームがプレーオフに進出するチャンスを増やす」趣旨で始められたはずなのに、実際には最強2チームのどちらかを救済する制度となってしまっているのである。
ア・リーグ東地区に所属する他の3チームにとって、2強のせいで、プレーオフに進出するハードルはとりわけ高くなっている。最近レイズが強くなってヤンキースやレッドソックスと互角に戦うようになったもののこれは例外的現象で、ブルージェイズとオリオールズのファンにしてみればプレーオフ出場は夢のまた夢。シーズンが始まる前から諦める状況が何年も続いているのである(レイズにしても3年前まではそうだった)。
万年下位の2球団には中地区移動で優勝のチャンスが。
特にブルージェイズの場合、昨季、東地区相手には勝率3割6分1厘と大きく負け越したものの、中・西地区相手には5割8分3厘と大きく勝ち越した。MLBは2001年から同一地区相手の試合数が他地区よりも多い「不均衡スケジュール」を採用しているが、現有戦力のままでも、いま中地区に移動すれば優勝候補の筆頭となり得るのである。
また、オリオールズにしても、東地区にいる限り「ちょっとやそっとの補強」ではプレーオフ進出の望みは開けないが、中地区に行けば「ちょっとやそっとの補強」で簡単に望みを開くことが可能となる。
ブルージェイズやオリオールズのファンにも希望を持ってもらえるようにしようと、「流動地区制」なるMLB改造計画が改革特別委員会で議論されているのである。