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公式戦11試合連続無失点!!
今季の優勝はバイエルンで決まり!?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2011/10/12 10:30
ブンデスリーガでは開幕戦を落として以降、7試合で21得点0失点のバイエルン。 リベリー(右)も3得点4アシストと絶好調をキープしている
自主性を尊重する指導方針にはスター選手もご満悦。
ハインケスは、周囲を驚かせるような戦術理論を持っているわけではないし、試合中にフレキシブルにフォーメーションを変えさせることもない。選手たちに細かく指示をすることもない。
要求するのは、攻守の切り替えを早くすることや、球際の競り合いでは全力を尽くすことくらいだ。どんなチームでもやらなければいけないことを、徹底させる。それが出来なければ、容赦はない。試合の前半でも躊躇することなく、選手を代えてしまう。
ただ、基本さえ守っていれば、あとは選手たちの自由にプレーさせる。ブンデスリーガ史に名を残すような名ストライカーだった彼は、スター選手の扱いも上手い。リーグ戦8試合で、3ゴール、4アシスト。今シーズンのバイエルンで圧倒的な存在感を放つリベリーは、語っている。
「自由にやらせてもらえれば、自分の持っているあらゆるものを見せられるんだ。今はサッカーがすごく楽しいんだよ」
巧者揃いで本来高い実力をつねに100%引き出す安定感。
昨シーズンまで指揮をとっていたファンハールはバルセロナ時代に若き日のイニエスタを起用したり、バイエルンに来てからもミュラー、バドシュトゥバーを引き上げ、シュバインシュタイガーにボランチという新たなポジションを与えたり、チームの力を引き上げるのに長けた監督だった。
ただ、リーグと国内カップで2冠を達成した一昨シーズン、あるいはシーズン途中で解任された昨シーズンでも調子を落とした時期があったように、チームに安定感をもたらすことは苦手としている。
もとのチームの実力を100として、かのオランダ人指揮官はその最大値を130に上げることは出来ても、コンスタントに100の力を出させることは出来ない。80しか出せないときもあるし、50しか力を出せないこともあった。
一方で、ハインケスは100あるチーム力を120や130へと引き上げるのは上手くはない。しかし、基本を徹底させるため、安定感がある。どのような試合でもチームに100に近い力を出させる手腕に長けているのだ。
今季は守備力がクローズアップされているが、攻撃から守備への切り替えを早くさせたことで、カウンターからあっさりと失点を許すことも少なくなったことがその要因の1つだ。
バイエルンは、一昨シーズンの時点でリーグと国内カップの2冠を達成し、CLでは準優勝したチーム。その主力がそのまま残り、さらに弱点であったGKやセンターバックも補強しているのだ。本来の力を出せさえすれば、そう簡単に敗れることはありえない。