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すでに二桁勝利の新生・寺原隼人。
関係者が洩らした“変身”の秘密とは? 

text by

永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2011/08/30 10:31

すでに二桁勝利の新生・寺原隼人。関係者が洩らした“変身”の秘密とは?<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

入団1年目(2002年)からの勝ち星は、6勝、7勝、0勝、0勝、3勝(ダイエー&ソフトバンク)。2007年に横浜へ移ってからは、12勝、3勝、2勝、4勝。今季オリックスへ移籍してから8月29日までの成績は10勝7敗、防御率2.70

「球速だけだったら'06年の方が速かった」(栗山)

 さらに7月29日の埼玉西武対オリックス戦では、新たな試みも行った。

 この日の寺原はいつものノーワインドアップからの投球ではなく、ワインドアップからのピッチングフォームに変えていた。

「オールスターで振りかぶって投げたら、いい感触が残っていたので……」

 これが力みのないゆったりしたフォームを生んで、さらに打者の体感を狂わせた。

「球速だけだったら'06年のプレーオフの方が全然速かったと思いますね」(埼玉西武・栗山)

 それでも寺原が打者のタイミングを狂わせることが出来たのはフォームにいわゆるタメが作れているからだ。他球団の打者に今季の寺原評を聞いても、同様に答える選手が多い。かつての速球派のイメージが先行し、打者のポイントをずらすことに成功している……このことは間違いないようだ。

「先発で二桁勝てるピッチャーというのは、この逆(タメを作らないこと)も出来るんですよ。バッターの体感を狂わすっていうのかな。早くしたり、遅くしたり、彼もそれが出来るようになったんじゃないかな」

 栗山はさらにそう答えた。

 この日までの寺原は、栗山に4打数3安打と打ち込まれていた。

 しかし、第1打席こそ打たれたものの、第2、第3打席では120キロ台の大きなカーブと縦の変化球とのコンビネーションで連続三振を奪っている。

 打者との間を自由に操り、縦横の変化球でも相手の打者を翻弄する。そういう意味では一癖も二癖もあるピッチャーに成長したのだ。

ロッテだけは寺原のイメージチェンジの中身を読んでいる!?

「そんな感覚は分かる気がしますね」

 オリックス・バッテリーコーチの山田もこれに続いた。

「彼は西武の涌井投手のように、手前でリリースするタイプのピッチャーではありません。実際の球速以上に速さを感じるピッチャーとは少し違います。リリースもかなり上からするタイプですし、実際にボールが来ると球速と体感の違いに『あれっ』って感覚になることもよくあると思います。この辺りも打者のタイミングのずれに繋がっているんじゃないですかね」

 しかし、他球団もそんな寺原に指をくわえて見ているばかりではない。

 8月27日の京セラドーム(対千葉ロッテ戦)では制球重視の今季の寺原に対しロッテ打線が“速攻”で対応。わずか3球で先制点を奪うなど、寺原対策をしっかりと練ってきていた。

 ロッテとの対戦防御率も6.20と分が悪く、チームのクライマックス進出にはなんとも不気味なデータだ。

【次ページ】 154キロの速球で甲子園を沸かせてから、ついに10年。

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