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ヤクルト失速で混迷する優勝争い。
「8回」を凌ぐチームが乱セを制す!? 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2011/09/03 08:01

ヤクルト失速で混迷する優勝争い。「8回」を凌ぐチームが乱セを制す!?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

巨人の復調をセットアッパーとして支える山口鉄也。一昨年は最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した山口だが、昨年から先発転向も模索されていた

 メジャーリーグで“魔球”が話題となっている。

「マリアノ・リベラのカットボール以来のとんでもないボールだ!」

 対戦チームの打者が、その威力を絶賛するのは、アトランタ・ブレーブスのセットアッパー、ジョニー・ベンタース投手のシンカーだった。

 何せ時速96マイル(約154キロ)で鋭く曲がり落ちる。打者はバットに当てるのが精いっぱいで、今季は71試合に登板して防御率1.33、WHIPは何と0.98を記録(記録はすべて8月31日現在)している。特に凄いのは、ゴロが多いために本塁打をほとんど打たれないことだ。昨年も83回を投げて打たれた本塁打はたったの1本だったが、今季もここまで74回3分の2で被本塁打はまだ1本と驚異的な数字を残している。

 ベンタースは2006年に左ひじを壊してトミー・ジョン手術を受けたため、その後はリハビリなどでメジャー昇格まで5年かかった。しかし昨年、リリーフ専門となるとセットアッパーとして頭角を現した。

 ブレーブスは昨年37セーブを挙げたビリー・ワグナー投手がクローザーとして長らく君臨していた。そしてそのワグナーが引退した今季は、メジャールーキー記録の40セーブを破り、今なお更新中のクレイグ・キンブレル投手が最後を締めくくっている。

 そのためベンタースに与えられる仕事は僅差のゲームの8回1イニングを0点に抑えること。そうして勝ち試合では確実にクローザーに勝利のバトンを渡し、負け試合でも相手の勢いをせき止めて味方の逆転勝ちを引き出す。そうして、キンブレルの活躍に目が行きがちだが、実はベンタースの8回を評価する声が地元では少なくない。その結果、ブレーブスはナ・リーグ東地区の2位ながら、79勝55敗とリーグ3位の勝率を残してワイルドカードでの地区シリーズ進出を確実なものとしている。

守護神にゲームをつなげるセットアッパーの重要性。

 さて……。なぜ、いきなりベンタースの話を書いたかというと、今年のセ・リーグを観ていて「野球は8回だ」という思いを改めて強くしているからだった。

 近代野球の要はクローザーだといわれる。

 今季は巨人が前半戦にクローザー不在でもたつき、序盤を突っ走ったヤクルトが失速したのも、守護神の林昌勇投手の離脱がきっかけだった。

 確かにクローザーの担う役割は大きい。ただ、考えてみればこのクローザーの活躍の場を与えているのが、実は8回を任されているセットアッパーなのだ。そしてこの8回の得失点が、勝負の分かれ目になっているケースが目立っている。

【次ページ】 セ・リーグ大混戦の理由は「8回の失点」に隠されている。

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