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フィギュアNHK杯でハッキリした、
安藤美姫ら五輪代表候補の課題。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2009/11/12 10:30
クレオパトラをモチーフとした衣装で妖艶にして繊細な演技を見せた安藤。会場はその美しさに完全に魅せられたという
メンタルがどれほどパフォーマンスに影響を与えるか。
語り尽くされるほど語られてはいたとしても、その重要性をあらためて浮き彫りにしたのが、11月6~8日に行なわれたフィギュアスケート・グランプリシリーズ(GP)のNHK杯だった。
今大会、日本勢は、男子が高橋大輔、小塚崇彦、女子は安藤美姫、中野友加里らが出場。高橋にとってはGP2シーズンぶりの大会、小塚、安藤、中野にとっては今季GP2戦目であり、GPファイナル出場をかけての重要な一戦であった。
結果は、高橋が4位、小塚は7位。安藤がロシア大会に続き優勝し、中野は4位で表彰台を逃した。
技術よりも精神面の落ち度を反省した選手たち。
結果もさることながら、大会の中で印象深かったのは、選手たちが次々に、気持ちの面を口にしたことだ。
SPの演技中、ステップで尻もちをつくという意外なミスなどをした高橋。
「後半、テンションが上がりすぎて、ジャッジにアピールしようと力が入ったかと思います」
小塚は、SPの冒頭でジャンプのミスをするなど、不本意な出来に終わると、このように反省を語った。
「練習のときは調子はよかったです。そのせいで考えすぎたかもしれません。いつもなら踏み切りのタイミングに集中しているのに、調子がよかったために、『氷のこの位置で飛ぼう』とか、ほかのことを考えてしまっていました」
安藤は「人生最悪の演技」とSPを振り返った。
一方の女子。
安藤は、ジャンプのミスが多発したSP終了後、「人生最悪の演技」とまで言った。
「演技に集中していなかった、気持ちが入らなかった」と振り返り、理由を説明した。
「最初のジャンプ、3-3をやりたいと思って練習してきていたんですけど、モロゾフコーチから、『ファイナルに進出することを考えて、ミスのないように、3-2にしなさい』と言われて。でもやっぱり3-3をやりたかったので、なんかもやもやして、気持ちが入らなかったですね。恥ずかしいです」
SPで3位に終わり、巻き返しを図ったフリーでも不十分な演技に終わった中野は言った。
「コーチからは、『練習どおりやれば大丈夫』と言われていました。でも、緊張がすごかったです。意識しないようにしていましたが、順位のこととか、ファイナル進出のことが頭をよぎったと思います。欲が出てしまいました」