セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イタリアに楽観ムードなし!
W杯連覇を狙う、静かなる王者。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2009/12/10 10:30
主将カンナバーロにとっても、集大成となるW杯。南アでも鉄壁の守備を見せるか
南アフリカW杯で連覇に挑むイタリアは、4日の組合せ抽選でパラグアイ、ニュージーランド、スロバキアと同組のグループFを引き当てた。
サッキやマルディーニら近年の歴代代表監督が「かなりいい組合せだ」と満足げに口を揃え、母国フランスが開催国南アフリカと同組になったUEFA会長プラティニも「相手国に失礼があってはならないが……イタリアは楽でいいな」と認めるほどの楽勝ドロー。
“パラグアイには少々用心しなければならないが、グループリーグの1位突破は鉄板”と衆目は一致している。イタリア国内は、さぞ楽観ムード一色かと思いきや意外にそうでもない。
「問題は準々決勝以降だ」
抽選会翌日、イタリア各紙は早々と決勝トーナメント以降の道のりをシミュレートした。
E組2位と当たる1回戦の想定国に「エトーが待っている」としてカメルーンを挙げたが、ここでも勝ち上がるのは当然視。その先の準々決勝で当たるのはスペインかブラジルか。決勝へたどり着く道程を考えると、ドイツ大会時より厳しくなることが予想され、それがイタリア国民の慢心を遮断する要因の一つになっている。イタリア代表のターゲットはあくまで連続優勝にあり、前回覇者としてグループリーグごときで足元をすくわれるわけにはいかないのだ。
残りわずかな代表の座を巡る熾烈な争い。トッティの復帰も!?
現在の代表を取り巻く状況も、ピリピリとした緊張感を生む一因となっている。代表監督リッピの構想では、すでに本大会の最終メンバー23人中17人が確定済。残る6つの椅子をめぐって当落線上の各選手がセリエAやチャンピオンズリーグで必死のアピールを続けている。特に激しいのがFW枠を巡る争いだ。来年3月に帰化予定のブラジル人FWアマウリ(ユベントス)を名指しする形で、FWパッツィーニ(サンプドリア)が「やつにはイタリア人らしさなど微塵もない」とライバル心を剥き出しにした。リッピやカンナバーロらドイツ大会メンバーと強い信頼関係で結ばれているトッティ(ローマ)の復帰も、いよいよ現実味を帯びてきた。
リッピの契約延長問題もある。昨年のユーロ敗退後、イタリア・サッカー協会はドナドーニ前監督解任に際して不手際を見せ、醜聞に晒された。見苦しい過去のくり返しを避けるべく、アベーテ会長は「W杯以降の監督任命問題は本大会前にクリアにする」と明言しているが、ユーベとの密約説をちらつかせつつ、より有利な契約内容を勝ち取ろうと画策するリッピは「負ければどうせ追われる身なのだから」と続行意思の有無を明らかにしていない。