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夏の甲子園、優勝候補を占う。
~菊池擁する花巻東が本命か~
text by
小関順二Junji Koseki
photograph bySPORTS NIPPON
posted2009/08/04 11:30
岩手代表の花巻東はエースの菊池雄星が県大会で自責点わずか2、防御率は0.72と抜群の安定感を誇る。打線もチーム打率3割8分3厘と好調だ。
夏の都道府県大会(甲子園予選)が始まる前、「強豪地区は?」と聞かれるたびに「東北、関東、九州」と答えてきた。厳密に言えば、強豪地区というより、ドラフト候補が多く集まる地区として、東北、関東、九州の名を挙げたのである。はたして、都道府県大会を経ても、その認識は変わらなかっただろうか。
今夏の都道府県大会で特筆されるのは強豪校の敗退が続いたことだ。
鵡川(南北海道)、光星学院(青森)、仙台育英(宮城)、習志野(千葉)、横浜(神奈川)、常葉菊川(静岡)、大阪桐蔭(大阪)、報徳学園(兵庫)、南陽工(山口)、清峰(長崎)、神村学園(鹿児島)と古豪・強豪が相次いで敗れ、その反動からか初出場校が13校を数えるまでに膨れ上がった。名前を挙げよう。
八千代東(千葉)、横浜隼人(神奈川)、長野日大(長野)、南砺福野(富山)、日本航空石川(石川)、常葉橘(静岡)、滋賀学園(滋賀)、鳥取城北(鳥取)、立正大淞南(島根)、華陵(山口)、寒川(香川)、徳島北(徳島)、伊万里農林(佐賀)
過去5年の初出場校は、'04年8校、'05年7校、'06年6校、'07年4校、'08年5校なので、今年の多さが実感できると思う。
際立つ花巻東・菊池の存在感。
この13校の中には、超高校級左腕・真下貴之(東海大望洋)から9回表に起死回生の同点2ランを放った上條優太(八千代東・外野手)、静岡大会決勝で2本のホームランを放ち、投手としても147キロの快速球で注目を集めた庄司隼人(常葉橘)、春の中国大会1回戦で広島工相手に延長10回を投げ抜き、15奪三振(完封)を記録した崎田聖羅(立正大淞南)などドラフト候補もいるので、その戦いぶりが楽しみである。
初出場校か否かにこだわらず優勝候補を占うと、やはり東北、関東、九州の3地区がクローズアップされる。
◇超高校級左腕・菊池雄星がマウンドを死守する花巻東。
◇強力打線と140キロ以上の本格派4人を抱える帝京。
◇春の九州大会制覇の原動力、国枝頌平、榎本葵、河野元貴の超高校級クリーンアップが健在な九州国際大付。
◇投打の柱・今宮健太と、大分大会準々決勝、楊志館戦で超高校級右腕・松永賢人から決勝2ランを放った河野凌太が中軸を形成する明豊。
この中で注目されるのはセンバツ準優勝投手・菊池の存在感である。センバツ後、いろいろな人に「甲子園史上では誰に相当する左腕なのか」と聞かれたが、適当な名前が思い浮かばなかった。甲子園大会に限定するなら、史上最高の左腕が恐らく菊池なのだろう。
「エースで4番」が伝統校を牽引。
3地区以外で優勝候補に挙がってくるのは、センバツ8強の中京大中京。和歌山大会準々決勝から決勝までの3試合を連続完封で退けた左腕・岡田俊哉率いる智弁和歌山。投打の主力、岡大海が注目を集める倉敷商。150キロ右腕・秋山拓巳がデンと控える西条の4校。いずれも「エースで4番」という形容がふさわしい超高校級選手がチームを引っ張る伝統校ばかりである。
組み合わせ抽選は8月5日、初日は8月8日。夏の甲子園大会はもう目の前に迫っている。