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ボーフムで「充実した時間」を過ごし、
小野伸二が帰ってくる。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2010/01/21 10:30
ドイツでの戦いは小野伸二を大きく成長させた。地元清水でのプレーが楽しみだ
「(天才と呼ばれたのは)昔の話です」と謙遜するが……。
ボランチ、トップ下、右MF。今季の小野は様々なポジションでプレーしている。前半戦のボーフムでは故障者が続出していたからだ。かつて怪我が多いと揶揄された選手は、怪我人の多いチームでその穴を埋める活躍を見せていた。
ハイネマン暫定監督はニュルンベルク戦のあと、小野についてこんな風に語っていた。
「小野はとても良い選手だよ。良い選手というのはどのポジションでもプレー出来るもの。だから今日はトップ下ではなくて、ボランチをやってもらったんだ」
コンスタントに試合に出て活躍を続けていると、チームも彼の活躍を前面に押し出すようになった。11月27日のホームゲームでは、小野の写真がマッチデープログラムの表紙を飾った。
「(天才と呼ばれたのは)昔の話です。今では、帰国したときにファンやマスコミが(空港で)大挙して待っているようなことはありません」
その冊子に載っているインタビューで小野は、自身の周りに集まってくる人が少なくなった現状を語っている。
チームの中心選手として、また精神的支柱にもなっていた。
しかし、ボーフムでは、彼のもとにチームメイトが集まっていた。
たとえば、今季の開幕を3日後にひかえて行なわれた紅白戦でのこと。小野はサブ組でプレーしていた。開幕もベンチスタートか。そう思って、ふて腐れることもあるだろう。しかし小野は、紅白戦の合間に、若い選手に大きなアクションをまじえながら熱心にアドバイスを送っていた。そして、この日の練習が終わるとピッチの上に腰をおろして、居残りでFKの練習をする仲間の様子を見ていた。するとそこには、一人、また一人と選手が集まってきて、談笑を始めた。外国人選手が必死に溶け込もうとしているのではない。このとき、外国人選手である小野を中心に輪が出来ていた。
ボーフムのトーマス・エルンストSDはこんな風に語っている。
「彼は偉大な選手だったが、同時に一人の人間としても素晴らしかった」