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ボーフムで「充実した時間」を過ごし、
小野伸二が帰ってくる。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2010/01/21 10:30
ドイツでの戦いは小野伸二を大きく成長させた。地元清水でのプレーが楽しみだ
昨シーズンのことである。
「それにしても、小野は相手との接触プレーを避けてばかりだったね。もう当たりに行けないのかね。残念だよなぁ」
これは、あるJリーグ関係者が、VfLボーフムの試合を観戦した後にもらした感想だ。
昨シーズンの小野はわずか8試合にプレーしただけ。4月には右ひざ内側側副靭帯を断裂してしまい、ひと足早くシーズンを終えてしまう。そんな状況を踏まえてなのかどうかは知らないが、「引退の危機」という心ない見出しを打った日本のメディアもあった。
監督交代を契機に目覚ましい変貌を遂げた今季の小野。
しかし、ちょっと待ってほしい。相手選手との接触を嫌がるような選手が、2度の警告を受けて退場することがあるだろうか。「引退の危機」にある選手の移籍についてのニュースがドイツで度々報じられることがあるだろうか。
今季の小野は、昨季の小野とは明らかに違っていた。
今シーズンの開幕を告げるホイッスルを小野はベンチで聞いた。だが、4シーズン前から監督を務めていたマルセル・コラーが9月20日に解任されたことで、彼を取り巻く状況は大きく変わる。
コラーの後、9月21日からおよそ1カ月にわたり指揮をとったフランク・ハイネマン暫定監督は、自身の初陣となる1FCニュルンベルク戦で小野を後半の14分からピッチに送り出すと、以降はスタメンで起用していく。10月、ハイコ・ヘアリッヒが監督に就任してからも、小野はコンスタントにプレーする機会を得ている。
清水への移籍は「個人的な理由によるものです」。
清水エスパルスへの移籍が決まり、ドイツメディアから移籍の理由は監督の構想外になったためかと問われて、小野は答えている。
「監督は僕を構想の中に入れてくれていましたよ。移籍は個人的な理由によるものです」
すでに日本への復帰が確実視されていた中で行なわれた、ウインターブレイク前の最後の試合となったハノーファー戦でも、彼はスターティングメンバーに名を連ねている。ヘアリッヒ監督からの高い評価は、ここにも表れていた。
「一人目の(コラー)監督が代わってからは、少しずつ自分のリズムが出てきましたね」
監督が代わったことで、小野自身も手ごたえを感じていた。レギュラーとしてプレーするようになると、試合前のウォーミングアップでは小野がチームの先頭にたってピッチに出て来るようになった。