Column from SpainBACK NUMBER
チームを支える強固な自信。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byAFLO
posted2009/04/09 07:01
大胆な新戦力起用で南アW杯を見据える。
中でもデル・ボスケらしいのは、大胆で積極的な新戦力の起用だろう。監督就任以来、彼がデビューさせたのはセビージャのディエゴ・カペル、アスレティックのイラオラとフェルナンド・ジョレンテ、バルセロナのボージャンにピケにセルヒオ・ブスケッツ、バレンシアのマタ。完成したチームを任されたのに、9試合で7人は多い。ワールドカップ予選最強の敵トルコとの戦いでも代表2戦目のピケーを信頼し、ヨレンテも使い、マタとブスケッツに初舞台を踏ませた。
目的は、当然2010年に向けて選手層を厚くすることだ。が、同時に優勝メンバーに刺激を与えることも意識している。ユーロ組が欧州王座に胡座をかいていたら、ポジションはやる気に満ちた新入りのもの。そういう空気を作って選手間に緊張を生みだし、全体のパフォーマンスを維持し、上げていくのだ。
デル・ボスケはまた、新しい選手を入れることでプレーのバリエーションを増やそうともしている。ジョレンテは、トーレスやビジャとは異なり、スピードよりもパワーで勝負するフォワード。空中戦に強く、ポストプレーもできる。ブスケッツも背が高いので、ちびっ子揃いの中盤の天井をちょっと上げられる。カペルはルイス・アラゴネスが放棄した純粋なウイング。マタもアウトサイドから前へ行ける。
トルコとの2戦目、イニエスタもセスクもビジャも使えない監督は、(新デビュー組ではないが)リエラをサイドに置いてフォーメーションを変えた。前述のとおりギリギリの逆転勝利ではあったが、チームは機能していた。
15連勝の世界記録更新なるか!?
「デル・ボスケはすでに出来上がったチームを引き継ぎ、手を加えた。いまの僕らはすごいよ」
イスタンブール決戦を翌日に控えたシャビは、自信に満ちた声で言った。
「スペインは昔から恐れられてきた。でもいま僕らと対戦するチームは、たいてい引き分けでいいと思ってるみたいだね」
ここまで9試合、首を傾けてしまう采配もなかったわけではないが、デル・ボスケの頭には未来を見据えたヴィジョンがあるのだろう。それに、レベルアップには実験が必要。実戦でそんなことをする余裕も、いまのスペインにはある。デル・ボスケ号は南アフリカへ向け順風満帆なのだ。
次の舞台6月のコンフェデレーションズカップでは、ブラジルとフランスが持つ15連勝という世界記録を更新するかもしれない。そして、新たなタイトルを獲得するかもしれない。