リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
中村がリーガで活躍できる理由と、
過去の日本人FWが失速した原因。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2009/08/29 08:00
現時点ではピッチ内外において絶妙なコンビネーションを見せている中村とデラペーニャ
いかなる状況下でも中村の能力は発揮されるはず。
一方、ポチェッティーノ監督の構想が崩れた場合には中村が厳しい状況に立たされる可能性が高い。
高い位置でボールを奪いに行くということは当然、自陣にスペースが広がることにもなる。自分たちの攻撃をきっちりとゴールにつなげなければ敵のカウンターから失点する機会が増えることになる。そうなれば自ずと勝利は遠ざかり、チームは戦い方の変更を余儀なくされる。
最初のスタイルで結果が出なければ、エスパニョールは自陣のスペースを消すために守備ラインを下げて人数をかけないカウンター攻撃を狙うようになるだろう。自陣で積極的に守備を行い、少ない人数で仕掛ける攻撃ではピンポイントのロングパスやスルーパスが求められることになる。
これはセルティック時代の中村がチャンピオンズリーグで格上のチームと対戦した時の状況と似ているが、チャンピオンズリーグにおけるセルティックのFWたちよりもリーガにおけるエスパニョールのFWたちは個人で状況を打開できるので、中村の能力は十分に活きるだろう。
ゲームの展開次第ではデラペーニャとライバル関係に。
ただし、こうなった場合に中村はイバン・デラペーニャとポジションを争うことになる。エスパニョールがカウンター型のチームになった場合、サイドにはスピードやドリブル突破を武器とする選手が起用される可能性が高く、自ずと中村の役割はデラペーニャと重なることになる。
デラペーニャはエスパニョールにおいて絶大な存在感を発揮している選手だ。これまでのエスパニョールでのキャリアで、チームがカウンター型になった時も攻守においてチームの心臓として活躍してきた。つまり、エスパニョールにおけるデラペーニャはどんな状況でも攻撃の起点として機能することを証明済みだ。
ボールを保持するというスタイルにおいては、中村とデラペーニャは互いのリズムを共有し最高の関係を築くことができるが、状況が変われば二人はポジション争いにおける手強いライバル同士になる。
中村はプレシーズン通りの活躍を見せられるか?
中村の優れた戦術眼と基本技術はスペインで十分に通用する。ただし、それがデラペーニャとの関係も含めてどんなチーム状況になろうとも通用するかどうかは未だ証明されていない。
まずはポチェッティーノ監督の構想と、その中での中村がプレシーズン通りに上手く機能するのかに注目だ。
そしてもしもそれが上手くいかなかった時に、中村を取り巻く状況がどのように変化していくのか。これを見続けることによって、リーガの本質の一端を垣間見ることもできるだろう。