野ボール横丁BACK NUMBER
“韓国の主砲”キム・テギュン、
「日本野球経由メジャー行き」の不安。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNaoya Sanuki
posted2009/11/18 12:25
韓国の主砲、キム・テギュン(金泰均)が日本にやってくる。
この春、WBCのときの打棒は鮮烈だった。
第1ラウンド、松坂大輔のカウント0-3からの高めの真っ直ぐをフルスイングすると、打球は東京ドームのレフト上部の看板を直撃した。
その後も、日本投手陣はホームランこそ許さなかったものの、存在感は圧倒的だった。
そんなキムが、千葉ロッテに入団してどれだけ活躍できるのかが楽しみであると同時に、本人が「日本で実績を残してメジャーへ行きたい」と希望を口にしているのが気がかりといえば気がかりだ。
というのも、韓国と日本ではバッティングスタイルがまったく違うからだ。
韓国と日本では打ち方が全く違う。韓国の方がメジャー向きだ。
WBCのあと、元メジャーリーガーの野球評論家、長谷川滋利氏がこんな話をしていた。
「パワーの差もあるけど、韓国と日本では打ち方そのものがぜんぜん違う。ぐっとバットを大きく引いて思い切り振り切るのが韓国。それに対し日本の打者は小さく引いて、小さなスイングを心がけている。あれだとミートはできるけど、打球が飛ばないのは必然でしょうね」
確かに韓国の打者は同じアジア人ではあるが、日本よりもメジャーの打者のイメージに近かった。
メジャーの取材経験が豊富なあるカメラマンは語っていた。
「アメリカでは、ファウルでカットしようという文化はそもそもない。基本的にフェアグラウンド内に強い打球を飛ばそうとしている。そうでなければ、アメリカの球場は成立しない。あんなに客席が近くて、しかもネットがないんだから。あの球場のつくりをみれば、メジャーの打者のバッティングに対する考え方がわかりますよね」
松井秀喜でさえメジャーの球質に慣れるのに時間がかかった。
メジャーの野球をみていて、日本の打者のようにちょこんと当ててファウルにするというシーンはほとんど見受けられない。それこそ、イチローぐらいのものではないだろうか。ボールそのものが重く、パワー投手の比率が高いため、よっぽどの技術がない限り、そのようなスイングだと力負けしてしまうのだろう。松井秀喜も、まずはメジャーのボール、球質に慣れるのにかなりの時間を要したと聞く。
つまり、キムが本当にメジャーを目指すのであれば、日本の野球を経験することはむしろ遠回りになるのではないかという気がするのだ。今のスタイルのままメジャーに挑戦した方が、むしろ素直に順応できるのではないだろうか。