プロ野球亭日乗BACK NUMBER
落合博満、2年連続1票差の殿堂逃し。
~選手とジャーナリズムの離婚危機~
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2010/01/14 10:30
昨年のクライマックスシリーズで敗退し、東京ドームを去る落合監督。昨年はWBCへの参加を中日の選手が辞退したことでも波紋を呼んだ
地元記者の間で不評を買う、メディアへの非協力的態度。
落合監督がグラウンドでの取材に対して、協力的でないという話はよく聞く(ただ、朝早くから自宅などに通っている記者に対しては、それなりにリップサービスをするという)。試合後には木で鼻をくくったようなコメントしかせず、ときには取材拒否ともとれる言動をするときもある。今年はナゴヤ・ドームのファン感謝デーの際に、グラウンドにまったく姿を見せなかった。
もちろん監督には、その日の試合で起こったことに、ある程度の説明責任を負う義務はある(それがメディアと野球選手の夫婦関係のはずだ)。またユニフォームを着る者としてはファンサービスも大事な務めの一つだ。そうしたことを拒む落合監督の言動に、批判的な声、特に地元記者の間からの声が強く出ているという話も聞こえる。
だが、だ。それが落合監督の殿堂入りを阻む理由になるかといえば、それは違う。
なぜ殿堂に値しないのか、メディア側に説明義務がある。
野球殿堂は野球界で顕著な活躍をした選手や監督、コーチ、または野球の発展に大きく寄与した人物に対して、その功績をたたえるために顕彰するものと規定されている。
少なくとも「顕著な活躍」という部分で、選手・落合の残した数字は、日本球界でもトップ中のトップクラスだった。その事実こそ殿堂入りを果たして然るべき理由なのだ。
今回の投票では投票権のあった「ベテラン野球記者」の中の77人が、落合監督へ票を投じなかった。その理由を誰かがきちっと明らかにすべきだろう。少なくとも落としっ放しでは、「ジャーナリズム」という看板は下げてもらわねばならない、と筆者は思っている。
そして何より……。選手の間ではこうした記者投票への疑問があることも忘れてはならない。こんなことが続けば、夫婦間の溝は深まるばかり。正式離婚の危機である。