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2010年、NBAに激動の時代きたる!!
ニックス&レブロンで来季は優勝?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNBAE/Getty Images
posted2009/12/07 10:30
ニューヨーク・ニックスvs.クリーブランド・キャバリアーズの試合でのレブロン。NYのマディソン・スクェアガーデンではレブロン入団を熱望するニックスファンで溢れた
二流選手の寄せ集めでも熱狂的ファンが容認する理由。
しかし今季に限って言えば、年俸を見ただけで勝負は決まっている。
偶然にも、ニックスの先発5人の年俸は、セルティックスの5人の半分しかないのだ! これはひどい!
ニックスの最高給を取っているヒューズでさえ、1試合の平均得点は11点を上回る程度。平均20点を超えてこそ一流選手だが、ハッキリ言えば今季のニックスは二流選手の集まりにしか過ぎない。
不思議なのは、ファンもこの状況を容認していることだ。
これにはカラクリがある。実は、ニックスは来季に向けて、お金をセーブしているのだ。
スター選手が軒並みFA。「2010年問題」の備えは万全!?
NBAには来年、「2010年問題」が発生する。いま旬の選手たち、レブロン・ジェイムス(キャバリアーズ)、ドウェイン・ウェイド(ヒート)ら、チームの中心選手だというだけでなく、NBAの顔とも言える選手たちが今季を終えると、続々とフリーエージェントの資格を得るからだ。
つまり、市場にドッとエリート選手が放出される。
ニックスがレブロンを狙っているとの報道はずいぶん前からあり、チームとしては来年にドバッと資金を放出する気でいる。それで来季以降、1973年以来の優勝を狙おうという魂胆だ。
そうなると必然的に今季は大型契約を結ばず、どうにもパッとしない選手の集まりになる。いい結果を残せるワケがない。
来季のスター選手を取るか? 今季の優勝にこだわるか?
今季のニックスを見ると、サラリーキャップ制のむずかしさを感じる。市場にいい選手がおらず、来年まで我慢すればスーパースターを獲得できるかもしれない……そう思ったら目前のシーズンを捨てるしかない。
しかしちょっと待ってくれ。よく考えてみよう。これは、ファンに対する裏切りではないか?
愛着を持てるチームを作るのが、チームの仕事だと思う。それを放棄してしまっては、良質な商品をファンに提供しているとは言えない。
何もニックスを批判しているわけではなく、ここにサラリーキャップ制の矛盾があるのだ。各チームのGMは「使うべきか使わざるべきか?」というジレンマと戦いながらチーム作りを進めるしかない。