日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
繰り返される森本との代表争い。
興梠はオランダ行きを決められるか。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshiya Kondo
posted2009/08/26 11:30
高校時代から何度も年代別代表に呼ばれ続けていた興梠。昨年のUAE戦でA代表デビューも果たしている
世界レベルの身体能力を代表戦で発揮するには?
一瞬のスピードで相手を置き去りにする裏への飛び出しが、興梠の最大の持ち味。それだけでなく、ポストプレーもこなし、ドリブルなどのテクニックもレベルが高く、角度のないところでもシュートを決めてしまうセンスもある。
元日本代表で鹿島OBの本田泰人氏は、「(興梠)慎三の身体能力はずば抜けている。しっかりと成長していけば、日本を背負うストライカーになっていくと思う」と絶賛する。まだまだ課題は多いにせよ、身体能力の高さから考えれば“世界と戦えるFW”として、期待の目を向ける関係者は多い。
だが、日本代表では結果を残せていない。7試合のうちまだ先発出場は1度だけで、目立った活躍もない。「頭から出たいけど、自分にその実力がないということ」と、もちろん本人も自身のパフォーマンスに納得していない。
招集されたり、されなかったりという不安定な状況下で、まだまだ鹿島と日本代表の両立に苦しんでいる姿がうかがえる。攻守の切り替えの部分など、鹿島と代表では相違点が少なくない。
「ディフェンスでいうなら、鹿島で行くところは行く、引くところは引くという感じですけど、代表は違うし、監督からもそこはよく言われるところ。チームの方針に合わせて、きちんとやっていかないといけない」
興梠の運命が決まる、オランダ遠征後の“勝負の秋”。
周囲に活かされてこそ光る、興梠という選手がチームにフィットするためには、ある程度時間を要するのかもしれない。鹿島でもリーグ戦出場29試合目でやっと初ゴールを決めたほどだ。興梠にとって初めての長期合宿になった6月の最終予選の期間では、パスの出てくるタイミングや、攻撃のリズムを確かめていたように見えた。「いろんな人といろんな話ができている」と充実感をにじませながら語ったものだ。
6月に得た経験を活かすためにも、このオランダ遠征に帯同できるか、できないかでは大きな違いが出てくる。興梠としては、どうしてもここでしがみついておきたいところ。
オランダ行きの切符を手にしなければ、サバイバルレースで厳しい立場に追い込まれる。オランダ遠征後の親善試合、アジア杯予選、南アフリカ遠征と続く“勝負の秋”に、興梠は生き残りを懸ける。