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オランダ戦のどこを見るべきか?
~たかが、されどの親善試合~ 

text by

杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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photograph byTamon Matsuzono

posted2009/09/05 08:00

オランダ戦のどこを見るべきか?~たかが、されどの親善試合~<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

期待のFW森本、大久保はケガで不参加となった。岡田監督の采配やいかに?

 16勝9分4敗。岡田ジャパンのオランダ戦を前にした通算戦績だ。このなかにはフレンドリーマッチ(親善試合)の戦績(6勝3分1敗)も含まれているので、公式戦の戦績は10勝6分3敗になる。だが、岡田ジャパンを評価するとき、16勝9分4敗という総合的な数字にどうしても目がいく。実際、そうした報道をよく目にする。

 フレンドリーマッチを、公式戦と同じ目線で眺める傾向が強いのだ。どちらの場合も、最大の関心は日本代表の勝ち負けになる。翌日の新聞の見出しは「結果」だ。スポーツニュースの姿勢も同じ。勝てば喜び、負ければ悲しむ。フレンドリーマッチと大真面目に向き合っている。メリハリを利かせ、「負けてもいいじゃん、フレンドリーマッチなんだから」と、おおらかな気持ちで見つめる人は限られている。

フレンドリーマッチは所詮「練習試合」なのだから……。

 オランダは格上だ。有名選手も数多くいる。公式戦以上に力が入る。日本のファンもさぞ楽しみにしているに違いない。

 しかし、オランダ国内はそうではない。文字通りフレンドリーマッチのつもりでいる。格下相手に「負けてもいいじゃん」という人はいないだろうが、大勝しなくてもそう文句は言われないだろう。

 これはオランダに限らず、世界の常識と言っても言い過ぎではない。多くの国がフレンドリーマッチを、日本で言うところの「練習試合」に近い感覚で捉えている。

 監督は、招集した選手をできるだけ多く出そうとする。積極的にテストする。メンバー交代が、公式戦より多く認められている理由だ。公式戦の交代枠が3人なのに対して、フレンドリーマッチは監督同士の申し合わせで決まる。6人が常識的な線だが、制限がない場合もある。

 後半に入ると、選手はどんどん入れ替わる。目的が試合に勝つことではなく、多くの選手をピッチに立たせることに見えるほどだ。

緊張感と戦術が解ける前の「試合前半」に注目するべし!

 コンビネーションは必然乱れる。試合は大味になる。緊張感も時間の経過とともに解けていく。オランダといえど、隙だらけのチームになりかねない。そこで日本がゴールを奪っても、あまり喜ぶことはできないのだ。結果報道は愚の骨頂そのものになる。

 では、勝ち負けではなく、どこに注目すれば良いのか。評価ポイントを、どこに設定すればいいのか。答えは「解ける前」になる。

 つまり前半だ。「結果」を求めるなら、交代のカードを切る確率の低い前半に限る。90分のスコアより前半45分のスコアのほうに重みはある。前半0-2で相手にリードを許し、後半巻き返して1-2でフィニッシュしても、「健闘」や「善戦」とは言いがたいのだ。「練習試合」の様相を呈し始めた後半は、まさに余興に値する。

【次ページ】 試合後半で見るべきポイントは「監督采配」となる。

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