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オーウェンに「7番」を与えた
ファーガソンの深慮遠謀。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byMatthew Peters/Manchester United via Getty Images/AFLO

posted2009/07/28 11:30

オーウェンに「7番」を与えたファーガソンの深慮遠謀。<Number Web> photograph by Matthew Peters/Manchester United via Getty Images/AFLO

2001年度バロンドール受賞者にしてイングランド代表としては現役最高得点(歴代では4位)を誇るオーウェン。ルーニーとは大の仲良しでもある

ルーニーとのコンビで代表返り咲きを画策!?

 テベスは、リーグ随一の攻撃力を誇るマンUで2年間34ゴール。一方のオーウェンは、得点機が希少だった過去2年間のニューカッスルで23ゴール。出場数から得点率を割り出してみれば、約2.5試合に1点のオーウェンが、約3試合に1点のテベスを上回る。ゴール前での嗅覚は衰えていないのだ。

 ルーニーとオーウェンのコンビは以前にイングランド代表で不調に終わったという意見もあるが、当時と今では事情が異なる。数年前までのオーウェンは、周囲にハードワークを強いる絶対的なエースだった。これに対して現在のオーウェンは、ニューカッスルでMFも同然の役割までこなしたチームプレーヤーになっている。前線での守備をルーニーに一任するようなことはなく、チャンスには率先してお膳立てを行うだろう。クラブレベルでルーニーとのコンビをアピールできれば、そのルーニーが攻撃の主役となる現在のイングランド代表への返り咲きが現実味を帯びるとくれば尚更だ。オーウェンは、来年のW杯を前に代表復帰の最善策と考えたからこそ、レギュラーの座も約束されず、基本給はニューカッスル時代の数分の一という待遇にもかかわらず、ファーガソンの要請にふたつ返事で応えたのだ。

オーウェンが不発でも、さらなる補強の手は残っている。

 ただ、全てが故障の多いオーウェンの“フィットネス”次第であることは言うまでもない。マンUが、ロンドンとマンチェスターでの2日間に渡る入念なメディカル・チェックの末に2年契約を結んだとなれば、「体は全く問題ない」という本人の発言にも信憑性は感じられるのだが……。

 仮に長期の故障とは無縁のまま新FWとして戦力となれば、ファーガソンをはじめ、オーウェン、ルーニーらマンU一行にとってはもちろん、FWの駒不足に悩むファビオ・カペッロ監督以下、代表関係者とファンにとっても万々歳の結果となる。そのインパクトは、超短期レンタル(2ヵ月強)で呼び寄せたヘンリク・ラーション(2007年)や、当時ライバルだったリーズから引き抜いたカントナ(92年)の獲得を上回り、ファーガソンによる「史上最高の補強」として後世に語り継がれる可能性すらある。

 おまけに、オーウェンが不発に終われば誰かが新たなダメージを被るというわけでもない。マンUはロナウド放出が決まった時点で前人未到のプレミア4連覇に赤信号が灯ったと見られているが、100億円台の補強予算はファーガソンがその気になれば使用可能な状態のままだ。カペッロ率いるイングランドには端からオーウェンの姿はなかった。

 傍目には「勝ち目のないギャンブル」とも映る『OWEN 7』の誕生。だがそれは、監督歴35年のファーガソンならではの、「敗者の存在しない賭け」とも言うべき極めて実用的な奥の手なのである。

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