MLB Column from USABACK NUMBER
マリナーズが、注目の新戦略で飛躍。
新GMによる「守って勝つ」野球とは?
text by
李啓充Kaechoong Lee
photograph byGetty Images
posted2009/12/19 08:00
ズレンシックは就任してすぐに選手だけではなく、監督にワカマツ氏を招聘。今季は復調の兆しが見られるなど、低迷していたチームの方向性を変えることに成功した
守備を重視した結果、チーム防御率もリーグ1位に。
ウィルソン以外にも、'09年のマリナーズは、守備防御点の高い選手をそろえていたので、以下に、その成績を示す(括弧内は守備位置別リーグ順位)。
【捕手】 ロブ・ジョンソン 8点(1位)
【三塁】 エイドリアン・ベルトレ 22点(2位)
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【中堅】 フランクリン・グティエレス 31点(1位)
【右翼】 イチロー 11点(2位)
ちなみに、31点と、チーム一守備防御点が高かったグティエレスは、ズレンシックがGM就任直後にトレードで獲得した選手であり、就任直後から守備志向が強かったことをうかがわせる。
かくして守備のよい選手を集めた結果、チーム全体の守備防御点は、2位エンゼルスの65点を大きく引き離し、109点とダントツのメジャー1位。'08年の16点(リーグ6位)から大きく改善したのである。
守備で109点を防いだ効果はてきめんで、チーム総失点(692)だけでなく、チーム防御率(3.87)もリーグ・ベストとなったことに貢献したことは疑いを入れない。
と、メジャーで一番守備のよいチームを作ったズレンシックだが、今オフ、さらなるグレードアップに励んだ。エンゼルスからFAで獲得したショーン・フィギンスの守備防御点は三塁手中リーグ1位の31点。ベルトレの2位では満足できなかったのか、さらにグレードアップしたのだから恐れ入る。
一方、OPSはリーグ最低。「守り勝つ」戦略はどこまで通じる?
ところで、マリナーズのチームOPSはリーグワーストの7割1分6厘(OPSについての説明はこちら)。一方、'09年、ア・リーグからプレーオフに進出した4チームを見たとき、そのOPSは、ヤンキース8割3分9厘(リーグ1位)、レッドソックス8割0分6厘(同2位)、エンゼルス7割9分2厘(同3位)、ツインズ7割7分4厘(同5位)と、いずれも強打で「打ち勝つ」チームばかりだった。
はたして、「打ち勝つ」チームに対抗してマリナーズが「守り勝つ」ことができるのかどうか。ズレンシックの新戦略が注目されるゆえんである。