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斉藤和巳 242球、報われず。
text by
永谷脩Osamu Nagatani
posted2006/10/26 00:09
敗れてすべてを失ったとき、人目を憚ることなく泣いた。「すまん」と声をかけて泣きじゃくる斉藤の前を通る選手たち。孤高のマウンドを投げ抜いた“66番”は決してひとりではなかった。その思いがまた、止めどなく溢れる涙に拍車をかけたのかもしれない。
一夜明け、福岡への帰路はいつにもなく虚しいものとなった。そんな中にサングラスをかけた斉藤の姿があった。前夜悔しくて仕方がなく眠れない時間を過ごしたため、その目が真っ赤なのを隠すためだ。
「今は頭の中を空っぽにして野球を忘れたい。その上で反省するべきところは反省して、もっと強い人間になって戻ってきたい。やっぱり、エースは負けたら終わりだから」
意地と気力と責任感で、チームと自分を支えてきた斉藤。今年のプレーオフで味わった辛さを次なる成長の糧として、あらたな決意のもとオフを過ごす。