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フランス「レ・ミゼラブル」 

text by

田村修一

田村修一Shuichi Tamura

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2008/07/10 18:28

フランス「レ・ミゼラブル」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 ドメネクは調子の上がらないテュラムとサニョルを外し、エブラ、アビダル、ウィリアム・ギャラス、フランソワ・クレルクのDFラインでイタリア戦に臨んだ。代表復帰以来、精神的にもプレーの面でもチームを支えてきたテュラムを、ついに切り捨てたのだった。

 またドメネクは、ベテランを尊重しない若手世代への懲罰的意味合いから、オランダ戦は交代出場の機会さえ与えなかったとされるベンゼマをスタメンに復帰させ、システムも初戦と同じ4-4-2に戻した。ただしリベリーをバイエルンと同じ左サイドで起用するのは初めてであり、理想のバランスを求めるドメネクの迷走は続いた。

 そのリベリーが、ジャンルカ・ザンブロッタとの接触プレーで、わずか10分で負傷退場。ルカ・トニへの単純だが効果的な縦パスに手を焼いたアビダルが、24分にPKを与え退場した瞬間に、フランスのユーロは終わった。

 「ユーロはW杯への準備の意味が強い。エメ・ジャケも、ユーロ'96 を2年後のW杯のための準備に利用した。そのことを、私も大会前にもっと強調しておくべきだった」

 試合直後のインタビューでの、場をわきまえない結婚宣言を詫びた後、ドメネクは神妙な調子でこう語った。言葉には真実も含まれる。が、それは敗北の言いわけにはならない。

 2年前のシナリオを、今回は踏襲できなかった。調整不足からはじまるベテランの不調。強豪との対戦。若手の不発と世代融合の失敗。不慮の事故。フランスはついに、負の連鎖から抜け出せなかった。

 「今大会の僕らに欠けていたのはジダンだ」

 そのジダンの後継者と見なされていたリベリーの発言は、今のフランスが抱える病巣の根深さを物語る。

 ならばこれからは……、リベリーがその役に就くのか。それともナスリが後を継ぐのか。未来はまだ見えない。

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