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中竹竜二 信は力なり。
text by
時見宗和Munekazu Tokimi
photograph byYoshiyuki Mizuno
posted2009/02/12 00:00
これが本来の姿だ。監督をバカにしてしまうのは、彼らがそういう態度をとってしまうような雰囲気をつくっている現在のラグビー界の環境のためだ。本当の原因は学生の中にではなく外にある。中竹は一対一にならないと本音を出せない部員達が、痛々しく思えてならなかった。
指導経験がない。部員達は冷ややか。それでも勝たなければならない。そういう状況のなかで、いったいなにを行動の指針にしたのか。そうたずねると、中竹は心の奥底から言葉を引っ張り出すように答えた。
「どのチームの監督よりも部員達を信じ切る。その一点に賭けました」
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信じ切るというのは、すべてを受け入れることですか?
「そうです。たとえて言えば狭い部屋に呼び込むという感じです。狭い部屋でふたりでなにかをしようとすれば、当然ぶつかって、『こういうことをしたらだめだよね』『こういうのはいいね』という会話が出てくる。逃げずに向き合ってそういうことを積み重ねていこうと」。すこし間を空けて中竹は続けた。「もしあのとき、監督としての理想像を作り上げてそれを追い求めていたら、ぼくは自己崩壊してしまったでしょう」
大切なのは自分ではなかった。
「結局、選手を身内だと思えるかどうかだと思います。身内だと思えばどんなにひどい仕打ちを受けようが気にならない。彼らが勝利に向かってがんばってくれることがすべて。感謝されようとも思いませんから」
(続きは Number722号 へ)