フィギュアGPファイナル 「交錯した4つの運命」 ～五輪代表の座を巡る死闘～ 

フリーで4回転を失敗した高橋は「頭が真っ白」になり大失速。

　翌日のフリー、最終滑走者として登場する。

　この日は、スタートからつまずくことになった。果敢に挑んだ最初の4回転トゥーループで転倒し、次のトリプルアクセルも失敗。

　その後のスピンでも中途半端な体勢となってしまう。そのため後半に行なったスピンは、同じ要素を繰り返す規定違反とされ、点数はゼロ。ショートとはあまりにも対照的な演技に終わった。結果、総合5位。

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　演技が崩れた原因は、4回転の失敗後の気持ちの切り替えだった。

「もう失敗できないと緊張してしまって。そのあと、頭が真っ白になって、次に何をすればいいのか忘れている状態でした」

　五輪代表の内定がかかっていることは意識しないようにしていたと言う。一方で、こうも語った。

「（順位を）意識しないようにしようとは思っていましたが、やっぱり、キープしたいと思ってしまっていました」

　どこか意識に作用したのだ。

「悔いが残る演技」の織田だが、2位入賞で五輪代表に内定。

　高橋と対照的に、織田信成は五輪代表になることを明確に掲げて大会に臨んでいた。

2008年春、安藤美姫と同じN・モロゾフ氏をコーチにつけ、さらなる才能が開花した織田信成

「この4年間、オリンピックのことだけを考えてやってきました」

「早くオリンピックの代表を決めたいです」

　ショートは、自身納得のいく演技を見せる。

「自分に集中してしっかり滑れました」

　1位の高橋、2位のライサチェクと僅差の3位につける。

　迎えたフリー。スタート直前、織田の表情はこわばり、唇からも血の気が引いていた。

「1位（高橋）と差がそれほどなかったので逆転したい、という欲が出ていて、よくない緊張をしてしまいました」

　試合後、織田はこのときの心境をこう振り返った。その緊張の中でも、冒頭からの3つのジャンプを無難に跳ぶ。しかし、練習では出来ていたはずの2つのアクセルジャンプは、失敗に終わる。

「お客さんの前だと、どうしても力が入ってしまって」

　演技を終えた瞬間、硬い表情を浮かべた。

「守りに入ってしまったことも含め、悔いが残ります」

　それでも2位となり、五輪代表内定という目標をクリアすることができた。

【次ページ】　五輪に向けて着実なステップを踏んだ両者の飛躍に期待する。