フリーで圧巻の滑りを見せた鈴木は初出場で表彰台に。

素晴らしい出来だったフリーの後、鈴木はキスアンドクライで涙を見せていた

　鈴木のフリーは、圧巻だった。トリプルルッツで踏み切り違反があったが、その他はミスのない演技を見せる。得意のステップではスピードに乗り、強く印象づけた。そして、初出場で表彰台に乗る3位となった。

「カナダでは、私もコーチも緊張してしまって（笑）。試合に向けて気持ちをどう持っていくか、徹底的に話し合いました」

　気持ちの面に加え、練習では、通しての演技、時間を区切っての練習を繰り返し、ミスが出たあとの対処にも備えた。

「練習でしてきたことを信じてやればいいんだ、と思えました」

　海外の記者からはこんな質問も飛んだ。

「これで五輪代表になったのでしょうか」

　思わず鈴木は苦笑したが、出来のよさが、記者にそう思わせたのかもしれない。

　何よりも、鈴木の好演技を支えたのは、こんな気持ちにあったのではないか。

「滑れることが幸せだと思って、会場に来ました」

　摂食障害で滑ることすらできなかった時期もある。女子の出場選手中、最年長である彼女は、初々しくもあった。

12月25日開幕の全日本選手権で残る代表枠を掴むのは誰だ？

　残る五輪代表枠は男女各2名。選考規定によると、1名は全日本選手権優勝者、もう1名も全日本選手権で表彰台に立った選手などから選ばれる。

　その全日本選手権は、12月25日開幕。

「次はきっちり代表を決めたい」という高橋。

「全日本でも魅せて、ぜひ切符を」と鈴木。

　他に、男子は小塚崇彦、女子は浅田真央、中野友加里、村主章枝らが出場する。

　4年前の12月、トリノ五輪の代表の座のかかった全日本選手権を思い出す。

「あんな異様な雰囲気は今までなかったかもしれません」

　以前、荒川静香は語った。一つのミスも許されない、そんな独特の緊張感に、今回も包まれるはずだ。

　その中で、勝負を左右するのは何か。

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