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長友と内田のCL対決で見えてきた、
これからの海外移籍と育成の方程式。 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO

posted2011/04/22 10:30

長友と内田のCL対決で見えてきた、これからの海外移籍と育成の方程式。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS/AFLO

「ウチダとナガトモの攻防は、まるでクロサワ映画のようだった」と現地メディアで称された激しい対決。『ガゼッタ・デロ・スポルト』では欧州CL準々決勝でのマン・オブ・ザ・マッチに長友が選ばれている。チェゼーナからインテルへ条件付き移籍をしていた長友だが、この夏までに完全移籍となることが現地報道で伝えられた

「渡欧の時期は慎重に」と風間氏は警鐘を鳴らす。

 では日本の選手は、どうすべきなのか。ルーニーやメッシに倣えとばかり、できるだけ早く「欧州組」になることを目指すべきなのだろうか?

 この点に関して示唆に富む分析をしていたのは、サッカー解説者の風間八宏氏だった。

 氏は早い段階から欧州行きを狙うのが、必ずしも得策だとは言い切れないケースもあると指摘。その理由を次のように解説した。

「そもそも、海外に行く行かないは別にして、早熟の天才と期待された選手が伸び悩んでしまうことは少なからずあるし、若くして海外に渡った選手が全員結果を出しているわけでもない。骨格も含めて、外国人選手と日本人では発育に差があるから、移籍のタイミングはケースバイケースで慎重に見極めたほうがいいと思う」

 たしかに本田圭佑や香川真司にしても移籍したのは21歳。しかも二人は10代の頃、決してずば抜けた選手ではなかった。永井謙佑が才能を一気に開花させたのも、長友同様、大学に進学してからだった。

遠藤のように、世界に通じる選手はJリーグでも育成できる。

 風間氏は関連して「スタイル」の問題にも言及している。そこで名前が挙がったのはガンバの遠藤保仁だった。日本ではサッカー選手として高みを目指すためには欧州行きがマストであるように語られることが多いが、遠藤は海外移籍をせずに、世界に通用するスタイルを独自に練りあげてきたからだ。

(Jリーグにおいて何歳でデビューを飾るのかという問題と、海外に何歳で渡るかという問題は別物だし、日本国内でじっくり選手を育てていく方針は、若い頃から遠征やユースの大会で「海外」に肌で触れさせようとする方針とも必ずしも抵触しないので念のため)

 ある意味、現在は欧州への移籍や選手育成の方法をめぐり、様々な試行錯誤=テストや実験を行っている段階なのかもしれない。

 もちろん、宮市のように高校卒業と同時に日本を飛び出し、オランダで一気に飛躍を目指す選手がいていいし、逆に長友や永井、遠藤のように日本国内でしっかり技術を磨いていく選手がいてもいい。

【次ページ】 「日本のスタイル」は試行錯誤の末に確立されるもの。

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