セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
大穴ナポリがミランとインテルを猛追。
サッカー界の『シンデレラ』になる?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2011/03/26 08:02
現在、得点ランキングでディナターレに次ぐ2位につけるカバーニ。カリアリ戦で2ゴールを決め、クラブ歴代年間ゴール記録(22点)に並んだ
春の陽気を感じる3月にナポリが優勝争いをしている。
そう開幕前に言ったとしても、「映画の話じゃあるまいし」と、相手にもされなかっただろう。
だが、サッカーは下手なシナリオを軽く凌駕する。
本命ミランと対抗インテル、そして大穴ナポリが、残り8試合で勝ち点差3の三つ巴。選手から会長まで個性派揃いの南部の雄が、21年ぶりのスクデットを狙うストーリーは山場に差しかかろうとしている。
主演男優は、リーグ戦30試合22ゴールと爆発中のFWカバーニだ。
1988年に15ゴールで得点王となったマラドーナの記録を抜き去り、クラブ歴代年間ゴール記録(22点)に並んだ。
“El Matador(ザ・マタドール/闘牛士)”の異名を得たウルグアイ代表の若きFWは、1月末のサンプドリア戦で今季3度目のハットトリックを達成した。『ガゼッタ・デロ・スポルト』紙は、シーズンを通して滅多に出さない異例の高評点「9」を与え、「魔物にとりつかれたか、さもなくば魔法使いか。完璧なフィニッシャーである彼はゴールの王」と絶賛した。
国内ばかりでなく、ヨーロッパリーグ(EL)のグループステージでも5ゴールを決め、決勝トーナメント進出の大きな原動力となった。「昨季と比べ、よりゴールに近いポジションでプレーさせてもらっている」と、演出家との信頼関係を強調する。
マッツァーリ監督がラスト15分での劇的な勝利を演出する。
快進撃を演出したのは、もちろん指揮官マッツァーリだ。
昨季、途中登板ながらチームを欧州カップ戦出場圏まで引き上げた智将。「監督の友人はいない」と公言し、馴れ合いを嫌う。試合中は判定への不服をあらわにし、テクニカルエリアでロングヘアをかきむしる。舌鋒鋭い激情家だが、同業者からの評価は高い。
カバーニにFWラベッシとMFハムシクを加えた外国人トリオを擁する今季、自らの戦術アイデンティティである3バックも完成の域にまで高まっている。GKデ・サンクティスと主将パオロ・カンナバーロを中心にした守備陣は失点数で3位(30節終了時)と堅守を誇る。