前回のニューイヤー駅伝でチームを初優勝に導いたGMOのエースは、9月27日のベルリンで自身3度目のマラソンに挑む。そこに向けてケニアで大迫傑と合宿をしているが、どんな狙いがあり、いかに自らの能力を向上させようとしているのか。千葉大学大学院卒、異色の理系ランナーにじっくりと話を聞いた。<前後編の2本立て/後編はこちら>
ケニア・イテン。9月下旬に控えるベルリンマラソンに向け、今江勇人選手は標高2000m以上の高地で走り続けていた。合宿をともにするのはマラソンの日本記録保持者・大迫傑だ。
その経緯を今江はこう語る。
「大迫さんが秋口にマラソンを考えているという話を聞き、当時はシカゴかベルリンかなと思ったので(※実際に大迫はシカゴに出場予定)、もしタイミングが合えば日本記録保持者の方と一緒にやれたら一番いいのかなと。僕自身もまだマラソンのノウハウがあまりない状態だったので、お声がけして、相談に乗っていただいたのがスタートですね」

今江は今年2月に大阪マラソンに出場した。自身2度目のフルマラソンは2時間07分56秒で21位。大きく失速をしたわけではないが、決して目立つ結果ではなく、目標としていたMGCへの出場権も獲得ができなかった。
実は、大阪マラソンに今江が出場すると聞き、個人的に大きな期待を抱いていた。
今年のニューイヤー駅伝ではエース区間・2区で区間2位ながら、最後に吉田響を交わして先頭で襷を渡し、チームの初優勝に大きく貢献。そこから約3週間後の大阪ハーフでは1時間00分52秒という好タイムを出していた。また昨年は駅伝でコンスタントに結果を残すだけでなく、11月に10000mで27分33秒84という自己ベストを出し、高いレベルでスピードを維持する力も証明していた。
そして何度か今江を取材をしたきた中で、トレーニングやシューズに対するロジカルで明晰な思考と言語化能力、また箱根駅伝とはほぼ無縁の大学時代に個人で頭角を現し、実業団で実力を飛躍させているという独特のバックグラウンドを持っていることから、心身両面で自己管理が求められるマラソンへの適性が高いのではないか、と勝手に考えていたためだ。
今江自身はこの大阪マラソンの結果をどう捉え、何が足りなかったと考えているのか。
「MGC出場権獲得に向けて2時間6分半を設定して練習していましたが、ハーフの通過が62分44秒(2時間5分半ペース)で、僕の慎重な性格もあって『少し速いかも』と第1集団から少し離れたんです。それで第2集団で前が見える位置をうろちょろしてしまったのが良くなかった点です。また、暑さもあり最後落ちて2時間7分台の着地となったので、今の日本で上を目指すなら6分台ではなく最初から5分台や5分30秒切りを意識した練習をしないといけないと痛感しました」
レース直後はラスト5kmの失速の原因を「走り込み不足」と捉えていたというが、いまはもう少し解像度を上げている。
「大迫さんや周囲と話したり調べたりする中で、後半のエネルギー不足が原因で乳酸処理能力が追いついていない、という話に行き着きました。そのため、現在は練習の組み立て方はもちろん、トレンドになっている糖質の補給方法なども見直す必要があると思っています」

大迫と一緒にケニアで走り込んでいる背景には、こんな分析があったのだ。
ではそこでどのようなアプローチをとっているのか。すでに「実感している」という高地トレーニングの意義を、血中乳酸値の測定などデータの扱い方やLT値とランニングエコノミーの関係性などの視点から、主観と客観を交えて語ってもらったので、動画をぜひご覧いただきたい。
「大迫さんとの練習は…」いまも感じるピリピリ感
動画では以下のようなトピックについて話を聞いている。
- 標高2100mは「4分〜5分のジョグでも息が上がる」
- 日本にはマラソン練習に適した環境がない?
- 初マラソンで経験した「やばい感じ」
- LT値(乳酸閾値)向上は何を意味するのか?
- 高地環境におけるリカバリーの重要性「メンタルの充実よりも…」
- 「点ではなく線で考える」大迫メソッドの実践
- 「大迫さんとの練習は…」いまも感じるピリピリ感
- 練習でも実践「どのタイミングでどの程度のジェルを摂るか」
インタビュー中、今江はこうも言っていた。
「まだマラソンを2本しか走っていない分、改善できることや試していないことが山ほどあります」
ケニアで大きな手応えを感じながら、決戦の地・ベルリンへと向かう強い意志が伝わるインタビュー。前編、後編あわせて55分、お楽しみください。(8月28日取材)

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