中央大学のエースとして箱根駅伝では2年連続で花の2区を担い、在学中の今年2月に臨んだ初マラソンは2時間7分台で走破。MGC切符を掴み、いきなり高いマラソン適性を覗かせた。もともとトラック志向が強かったが、明確にマラソンを志した理由はどこにあったのか。初の42.195kmの手応えはどうだったのか。社会人1年目、マラソンランナーとして駆け出したばかりの溜池にじっくり話を聞いた。<前後編の2本立て/後編はこちら>
溜池一太には“マラソンランナーになろう”と決意した瞬間がはっきりとあった。大学3年の箱根駅伝。1年時、2年時と1区を担ってきた溜池が、初めて花の2区を任された大会だ。
「8月に仙骨を骨折してしまい、11月にやっと復帰できて、全く準備期間のない中での箱根でした。タイムは全然速くないし、区間順位も9番なんですけど、自分の中ではすごく手応えがありました」

“全然速くない”と溜池自身は言うものの、1時間6分39秒という記録は、吉居大和(現・トヨタ自動車)が持っていた当時の中大記録(1時間6分22秒)に肉薄するものだった。溜池はもともとトラックの5000mや10000mで活躍したいと中大に入学したが、この2区を経験して方向転換したという。
「距離が長ければ長いほど自分の力を生かせるっていうことに気づいて、大学3年生の箱根終わりぐらいから“マラソンをやりたいな”と思いました」
そして、大学卒業を前に2月の別府大分毎日マラソンで念願の初マラソンに挑戦し、さっそく結果を出す。2時間7分59秒で日本人6位(全体7位)となり、2027年秋に開催されるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ:ロサンゼルス五輪のマラソン日本代表選考レース)の出場権を獲得。さらには、藤原正和駅伝監督が持っていた中大記録(2時間8分12秒)を塗り替えた。
箱根駅伝の延長で挑んだ初マラソンは35km以降ペースダウンし課題を残したが、溜池自身が予感した通り、マラソンへの適性は確かにあった。
「マラソンをやったことで、自分の体に変化が起きている」
この春からは実業団のSGホールディングスに進んだが、練習環境はこれまで通り。母校の中大を拠点とし、引き続き藤原監督の指導を仰ぐ。
シーズンインは少し遅れたものの、社会人初レースとなった5月4日のゴールデンゲームズinのべおかの5000mで13分26秒87の好記録をマークすると、5月23日にアメリカで行われたLA Track Festivalでは13分19秒24の自己ベストを樹立した。まずはトラックで上々のスタートを切った。
「13分20秒という大台を切れたことももちろんですけど、それよりも自分の走りがやっとできるようになったところにすごく手応えを感じています。(1000mごとの)ラップタイムがずっと2分40秒で走れて、最後上がることも落ちることもなかった。余裕を持って走れるようになったのは、マラソンをやったことで、自分の体に変化が起きているというか、学生時代とは違った強さが見えてきたんじゃないかと思います」
単に好記録をマークしただけでなく、マラソンランナーとして新たな陸上人生を歩もうとしている溜池にとって、新しい扉が開かれたレースだった。

真剣に考えた箱根駅伝・5区「山上り」
インタビューは前後編の2本立て。前編では以下のようなトピックについて語ってくれた。
- 初マラソン後の代償「2、3月は全くスピードが出なくて」
- 世界で勝負するための選択
- そもそも洛南から中大を選んだ理由は?
- SGHは「地元が…」「会社には感謝しています」
- 同期・山口智規の存在「12分台を出すと思う」
- 藤原監督とマラソン
- 真剣に考えた箱根駅伝・5区山上りの可能性
- 最後の箱根駅伝「楽しかった」
「中大を拠点とする以上はトラックのスピード練習を多くやっていくので、そこで付ける力とマラソンのスタミナをうまく掛け合わせることができれば、すごく面白い未来が待っているんじゃないかなと思います」
MGCでも有力候補になりそうな新社会人ランナー。その現在地や思考法がわかる前編、後編あわせて50分弱のロングインタビュー、ぜひご覧ください。
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