都心の一等地に聳えたつアマチュア野球の聖地は、2年後に迎える100周年を前に、今まさに生まれ変わろうとしている。数々の名勝負やドラマの舞台となった球場が歩んだこれまでの足跡を、子供の頃から半世紀近くにわたって足を運んできたライターが、本拠地としてプレーしたOB2人の言葉とともに、ここに記す。
明治神宮外苑再開発により、明治神宮野球場、いわゆる神宮球場も新築移転する計画が発表されている。2032年に完成予定の「新・神宮球場」がどんな球場になるのか楽しみだが、筆者はそれを見ることはできないだろう。
前立腺がんの多発転移でステージ4と診断されたいま、化学療法を受けている。医学の進歩は著しいが、さすがに「あと8年」は無理というもの。
ならばせめて、子どもの頃から親しんだ「現・神宮球場」への感謝と敬意を込めて、文章として残しておきたいと考えた。
年を取ると、新しいものよりも古いものに愛情を注ぐようになる。この原稿も故きを温ねるばかりで新しきを知ろうとしないものになると思うが、そういう事情があってのことなのでご理解いただきたい。
神宮球場に対して抱く「友情に似た思い」。
昨年3月、オープン直前の「エスコンフィールドHOKKAIDO」を見学した。これまでの球場の概念を覆す斬新な造りに圧倒され、ここに通う北海道の野球ファンが羨ましく感じられた。
一方で筆者は、「僕には神宮球場があるからいいや」とも思った。
負け惜しみでも何でもなく、筆者には神宮球場のほうが合っている。神宮球場は筆者にとって「好きな場所」なのだ。好きな理由は後述するが、昭和の香り馥郁とし、設備的にも限られた条件の中で、東京六大学野球や東都大学リーグ、そして何より東京ヤクルトスワローズの本拠地として機能するこの球場に、友情に似た思いを抱いてしまうのだ。まさに中高年特有の考え方で、若い読者諸氏の前ではお恥ずかしい限りだ。
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photograph by Tamon Matsuzono