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<6つの国際大会で優勝>紀平梨花が語った「やりたいことが沢山あって、ワクワクする」<16歳、成長の軌跡/2019年>

シニアデビューの今季、トリプルアクセルを武器にGPファイナルや四大陸を含む6つの国際大会で優勝。新女王誕生に世界が沸くなかで、見えてきた課題、そして来季の飛躍に懸ける彼女の思いに迫る。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2018-2019 紀平梨花 もっともっと高いところに。)

 16歳の少女に、1万8000人の熱視線が集まる。3月22日の世界選手権女子フリー、紀平梨花はショート7位からの大逆転に向けて、2本のトリプルアクセルに望みを繋いでいた。ミスは許されない順位だった。

 1本目は成功、しかし2本目で転倒。その瞬間、金メダルは遠のく。しかし勢いが落ちることなく残る演技をパーフェクトに滑り終えると、小さくうなずいて「まあ、よかった」とつぶやいた。

「『まあ』はトリプルアクセルの2本目で、『良かった』は演技全体に対して。2本目のミス以外は悔いの無い演技ができました」

 高得点をマークするも僅差で4位。メダルは逃したが、すっきりした笑顔だった。

「4位でちょうど良かったです。まだまだ目標はもっと高いところ。ここで満足しちゃダメだから」

 鮮烈なシニアデビューを飾ったシーズン。紀平がトリプルアクセルと共に歩んできた日々は、そして目指す高みとは。

トリプルアクセルのミスで自信をなくした時期も。

 豪快なジャンプを跳ぶ紀平だが、性格はジャンプの見た目とは全く逆だ。繊細で、細かいことにこだわる。しかしその研究熱心な姿勢があったからこそ、女子にとって大技であるトリプルアクセルの技術を身に付けた。

 先駆者である伊藤みどりは言う。

「トリプルアクセルは見た目はパワフルなジャンプ。だけど力で跳ぶものではありません。体調、緊張感、氷の硬さ、タイミング、そして助走の角度とスピード。さまざまな要素がピタリとハマらないと成功しません」

 紀平が初めて挑戦したのは’15年、13歳の夏だった。地方大会の6分間練習で、ジャッジの前でクリーンに降りた。試合では着氷が乱れたが、伊藤、浅田真央に次ぐ天才の出現をアピールした。

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photograph by Asami Enomoto

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