第99回箱根駅伝は、駒大が制して大学駅伝三冠を達成。しかし、その裏では幾多のアクシデントに見舞われていた。優勝を引き寄せたのは、リスクとの向き合い方だった。
217.1kmの激闘を終えて、駒澤大学の大八木弘明監督の口からは、何度も何度も選手たちを称える言葉が聞かれた。
「選手たちには感謝しかありません。本当によく箱根駅伝を走ってくれたと思います」
指揮官のそんな言葉には安堵感がにじみ出ていた。それほど、今回の箱根駅伝は簡単なレースではなかった。
今大会は、田澤廉(4年)を擁し、出雲駅伝、全日本大学駅伝を制して初の三冠に王手をかけていた駒大が大本命。箱根で抜群の強さを誇る前回王者の青山学院大学に、出雲、全日本ともに2位となった國學院大學も、優勝候補の一角と見られていた。
この3校の補欠を含めた戦力を見ると、どの大学にもやはり優勝のチャンスはあったに違いない。ただ、どの大学も、想定していたベストオーダーを組めなかった。
それは優勝した駒大でさえそうだった。
「12月頭の合宿で体調を崩し、その分を取り戻そうとして頑張り過ぎたのか、内臓をやられてしまいました」
ロードで抜群の安定感を誇る花尾恭輔(3年)は8区にエントリーされていたが、体調が万全ではなく、当日変更になった。
また、スーパールーキーとして注目されていた佐藤圭汰(1年)は、補欠登録されていたものの、出番は回ってこなかった。
「3区の予定で準備をしていましたが、30日の夜に腹痛があり、感染性胃腸炎と診断されました。長い距離の練習も余裕を持ってできていたんですけど……」
スピードランナーの佐藤は、21km超の距離にも自信を付けていたが、箱根デビューは次回以降に持ち越しになった。
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photograph by Tsutomu Kishimoto