今年の“夏男”はエル・デスペラードだった。
プロレス界の夏の風物詩と言えば、新日本プロレス“真夏の最強戦士決定戦”G1クライマックスだが、ジュニアヘビー級のデスペラードは、ヘビー級中心のG1に出場しない代わりに7・23DDT両国国技館、8・11フリーダムズ横浜武道館、8・26「佐藤光留自主興行」富士通スタジアム川崎など、他団体のビッグマッチに数多く出場。各大会を大いに盛り上げたその活躍ぶりは、夏のMVPと呼ぶにふさわしいものだった。
近年、新日本のレスラーが他団体のリングに上がることは珍しくなくなった。それでもデスペラードが特異なのは、新日本の人気レスラーでありながら“メジャー”の驕りが一切なく、邪道視されがちなデスマッチを含めたインディー各団体のスタイルを心からリスペクトし、自らその世界観に飛び込んでいくことにある。そうすることで今や他団体のファンから最も愛され、求められる新日本のレスラーになっているのだ。
「僕はアメリカンプロレス、メキシコのルチャリブレ、デスマッチも含めてプロレスというジャンル全体の表現が好きなので、新日本のスタイルだけでなく、いろいろ体験して吸収したい。プロレスのスタイルに貴賤はないし、他団体にもすごいレスラーはたくさんいるので、その選手が一番輝くステージで闘いたいから出るんです。新日本のレスラーって、他団体のファンからそのスタイルをやりもしないでお高くとまってるように見られがちじゃないですか。だったら僕が出て、『新日本の選手ってこんなにすごい試合をするんだ』って言わせて、そこの団体のお客さんにも新日本を見てもらえるような試合内容を残す。これが、僕が外に上がるときの最低条件だと思ってやらせてもらってますね」
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