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「乱闘開始のゴングが鳴る」2003年“伝説のMLBプレーオフ”と2人のサイ・ヤング賞投手<作家・奥田英朗の視点>

2023/07/06
(左)ロジャー・クレメンス(右)ペドロ・マルティネス

 ロジャー・クレメンスの名前を最初に聞いたのは、1986年、レッドソックスの若き剛腕投手が一試合で20奪三振の新記録を打ち立てたというニュースだったと思う。

 わたしがMLBに興味を持ち始めたばかりの頃で、前年の'85年に元巨人のデイビー・ジョンソン率いるメッツにドワイト・グッデンという超新星が現れたことを雑誌の記事で知り(20歳の若さで24勝4敗、防御率1.53、268奪三振! 当然サイ・ヤング賞)、やっぱり本場の野球は凄いと畏敬の念を抱いた矢先のことだった。わたしは若かりし頃、洋楽と洋画に夢中になった世代だが、それと同じように、本場への憧れで“洋球”好きになったのだ。

 当時、日本にMLB情報はほとんど入って来ず、わたしはもっぱら『週刊ベースボール』誌の見開き2ページのコラム記事を読んでは想像を膨らませていた。だから見たことはなくても名前だけはいっぱい知っていた。ドン・マッティングリー、ウェイド・ボッグス、ジョージ・ブレット、マイク・シュミット……。ボブ・ホーナーが日本のスワローズに入団したときも、おお、ブレーブスでデール・マーフィーと3、4番を打ってた現役バリバリのスラッガーではないかとすぐにわかった。

 わたしは根がマニアなのである。情報が乏しいほどその収集に熱意を燃やし、知識だけは蓄積されていく。ジョージ・ブレットといえば有名な「松(やに)バット事件」、なんて君らは知らんだろうが、わたしは知っておるのだよ。グーグルで調べてくれたまえ。

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photograph by Naoya Sanuki / Koji Asakura

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