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「投手・大谷が打者・大谷に追いついた」大谷翔平はMLBでも希少な“馬車馬タイプ”<アメリカ人記者のインサイド・レポート>

2023/07/06
打者としてホームラン王争いを繰り広げながら、投手としても年を追うごとに進化を続け、地位を築いた。日本人初のサイ・ヤング賞に輝く可能性はあるのか。そこには二刀流ならではの評価が影響しそうだ。

 今季ここまで、投手・大谷翔平が最も光り輝いたのはWBCの決勝だった。チームメートのマイク・トラウトと、それぞれの国の代表として優勝をかけ、1点差の9回2アウトというクライマックスで、初めて敵として向かい合った。それはファンにとって生涯忘れることができないほど、最高に熱く劇的な瞬間だった。トラウトを三振に斬ったあの投球は、投手大谷の魅力を凝縮していたと思う。

 さて、それではサイ・ヤング賞はどうだろう。この賞は、特定の試合で驚異的な投球をしたからといって選ばれるものではなく、シーズンを通して圧倒的な力を発揮した投手に贈られる賞だ。

 大谷は今季開幕から7試合で無傷の4勝、防御率は2点台と好成績を挙げ、序盤のサイ・ヤング賞争いをリードしていた。しかしその後の6試合で1勝2敗、防御率4.14と調子を落とし、6月2日のアストロズ戦では6回を8安打5失点(自責点4)と打ち崩された。その次のマリナーズ戦では、5回までに5四球を出し3失点した。

Nanae Suzuki
Nanae Suzuki

 打たれたアストロズ戦直後の6月第2週に、MLB公式サイトが野球記者や専門家によるサイ・ヤング賞模擬投票を行っていたが、大谷は得票の上位5位以内にも入っていなかった。ア・リーグの候補に名が挙がっていたのはその時点で防御率と勝利数でリーグトップのレイズの左腕シェーン・マクラナハン、投球回数でトップのレンジャーズの右腕ネイサン・イオバルディ、奪三振数と投球回数でリーグ上位のヤンキースの右腕ゲリット・コール、防御率2位で安定感のあるアストロズの左腕フランバー・バルデスといった顔ぶれだった。

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photograph by Nanae Suzuki

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