1968年メキシコ五輪以来となる、メダル獲得を――。久保建英や堂安律ら若き才能と、吉田麻也らの経験が融合し、日本サッカー界の悲願達成へ、あと一歩まで迫ったチームの開幕前の苦難から、3位決定戦で流した涙の結末までを追う。
ピッチにへたり込んだ久保建英が泣きじゃくっている。
仲の良い橋岡大樹に慰められても、メキシコの選手がかわるがわる励ましにきても、溢れ出る涙は一向に止まらない。「涙も出ない」と語ったスペインとの準決勝後と、あまりに対照的な姿だった。
そして、思い出したのは大会中に久保から聞いたこんな言葉だ。
「負けたくないっていう気持ちが強くて。こんないいチームはないし、環境にも恵まれて。ここを逃したら次はないと思う。悔いの残らない試合をしたいと思います」
メキシコとの3位決定戦後のピッチで20歳の若者に去来したのは、果たしてどんな思いだっただろうか。目標を成し遂げられなかった悔しさか、チームを勝利へと導けなかった不甲斐なさか、大好きだった仲間との戦いが終わってしまう寂しさか……。
そのすべてだったかもしれないし、本人でさえ分からないのかもしれない。
確かなのは、日本代表の戦いが、見る者の心を揺さぶったことだ。予期せぬアクシデントをチーム全体でカバーしながら、試合を重ねるごとに逞しくなり、過密日程の中で心身ともにボロボロになりながら、最後まで戦い抜いた。それだけに……。
このチームにはもっと相応しいエンディングがあったのではないか、という思いを抱かずにはいられない。
日本チームに最初の歓喜をもたらしたのは、久保だった。
7月22日に行われた南アフリカ戦。国際大会特有の固さと緊張が支配するなか、5バックを敷く相手を攻め崩せずにいた71分、久保が右サイドからドリブルで中央へと切れ込み、左足で決勝ゴールをねじ込んだ。
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photograph by AFLO