スノーボードではすでに絶対的な地位を築いている。リスクを承知であえて挑んだスケートボードとの二刀流。日本勢5人目の夏冬出場を決めた男の胸の内とは――。
「自利利他」という仏教用語がある。自らの悟りのために修行し努力すること、他の人の救済のために尽くすことのふたつを同時に行うというものだ。
「誰もやっていない何かに挑戦し続けることを勝ち負け以上に大切にしているつもりです。自分のためにいろいろなチャレンジをすることが結果よりも大事だから」
スケートボードで東京五輪に挑む理由を尋ねられたとき、平野歩夢は“自分のため”を強調していた。これを耳にしたとき、本職であるスノーボーダーとして2018年の平昌五輪を前に彼が発していた言葉を思い出した。
「自分にとって理想の幸せがあって、それをスノーボードで手にすることができればいいと思っています。そこにスケートボードも視野に入ってきていて、それらを納得いくカタチで両立させることで自分自身の幸せにしたい。そして、その“自分のため”が“人のため”にもなればいいですね」
その言葉通り、平昌五輪では2大会連続の銀メダルを獲得し、平野の“自利”は世界中の数多の人々を熱狂させたのだ。
そんなスノーボーダーの原点は、生まれ育った新潟県村上市にある。東京五輪のスケートボード日本代表の事前合宿が行われる「村上市スケートパーク」、その前身にあたる「日本海スケートパーク」だ。
サーファーだった平野の父・英功さんは夏になると日本海の波が小さくなることからオフのトレーニングの一環として着目し、スケートボーダーのため、そして自分の息子たちのためにも、汗を流して練習施設を作り上げた。
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