後半16分、前戦に続き途中出場した快足ウイングは、インパクトプレーヤーの仕事をきっちりと遂行した。しかし、彼の役割はそれだけにとどまらない。多様な動きで全力を尽くし、チームを支えた。(Number988号掲載)
フルハウスになった豊田スタジアム。
後半16分から投入された福岡堅樹は、痛恨のミスを犯していた。
日本は福岡が投入される直前、モールからのトライを決めて26-12とリードを広げていた。さあ、4トライを挙げてボーナスポイント獲得だ! というギアを上げる場面で投入されたのが福岡だった。
しかし、ワールドカップに入って最高のパフォーマンスを見せるサモアは、後半30分には日本のゴール前に迫り、ラインアウトから波状攻撃を仕掛けてきた。
日本の防御網が徐々に食い込まれていくと、最後は12番、ヘンリー・タエフが日本のタックラーをかわしてトライを奪った。コンバージョンも決まって26-19。残り時間はたっぷりある。もうワントライを許したら、引き分けの危険性もある――。少しだけ、嫌な予感がした。
実は、タエフにタックルに行ったのが福岡だった。かなり低い体勢でタックルを仕掛けたが、タエフはくるりとスピンすると、福岡を軽くかわしてトライをあげた。
福岡の視点からは、タエフの後ろにはスタンドオフのトゥシ・ピシも控えており、照準を絞り切れなかったのかもしれない。結果としてすがりつくようなソフトなタックルになり、トライを献上してしまった。
痛恨のタックルミス。点取り屋が失点の直接的な原因を作ってしまったのだ。
しかし、福岡はここからギアを上げる。自らのミスを埋め合わせするかのように、試合終了の時間まで好守にわたり仕事をこなしていく。とにかくあらゆる局面で福岡が顔を出してくるのだ。
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photograph by Atsushi Kondo