日本のスポーツにおけるメンタルの位置づけは、永遠の議題とさえ言えるかもしれない。独特の「根性」「忍耐」「部活」的文化は今も日本人のスポーツ観のどこかに根強く存在している。それはどこから生まれ、いかなる変遷を遂げてきたのだろうか。アスリートたちの内面の変化は、ある意味で日本という国がたどってきた変化をも映し出している。勝利至上主義と自由・自立の絶え間ない角逐の歴史を概観してみると、日本人のメンタルが向かうべき方向がおぼろげに見えてくる。
星野源がCMでいう。「ライバルは、1964年」。言うまでもなく、東京オリンピックが開かれた年だ。日本がこの大会で獲得したメダルは金16、銀5、銅8。最高視聴率をマークしたのは女子バレーの決勝、日本対ソ連戦だった。
当時、流行語になったのが女子バレーの大松博文監督の「俺についてこい」。この年の『文藝春秋』11月号に、「根性・闘魂・指導力」と題された監督の対談が掲載されていて、時代の空気を伝えている。
「勝たねばならん、という根性をうえつけられたのは、やはり戦争によってですね」
敗戦からまだ20年も経っておらず、指導者の側には従軍経験が“哲学”として残っていた時代だ。厳しくなるのは必定だった。
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photograph by Naoya Sanuki