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アイヌの老狩人が語る、ありのままのクマの姿。~65年の狩猟生活、師匠はクマ~

2015/11/15

 聞き書きなので、語り手・姉崎等さんを“著者”としよう。著者は8歳のときから母方のアイヌ民族の集落で暮らした。12歳で猟を始め、狩猟生活65年に及んだ。クマ撃ちは22歳から単独で始め40頭、指揮を執った集団での猟を加えると約60頭を仕留めた。そんな古老が、狩猟の仕方から、クマの生態と知恵、付き合い方、アイヌ民族とクマとの縁、共存の課題まで、語りつくした。


 優れた狩人は優れた自然観察者だ。どの話も具体的で説得力があって面白い。たとえばクマとあわないようにする予防策。通説の、鈴を鳴らす、笛を吹く、空き缶を叩くは、クマが聞きなれた音で通じない。歩きながらペットボトルを押してペコペコ鳴らすのがいいそうだ。あってしまったら、逃げずにらめっこ。そしてこんな対処法を導きだした体験を語るのだが、すべてのテーマに実証主義が貫かれる。冬眠していた巣穴から出てきた母グマは空腹と思われるが、10日ほど何も食べず、子グマと一緒に木登りをしたり、雪の斜面に“滑り台”を作って遊んでやるという。子グマを守ろうと飛び出してきたクマが近づく車と並走した。スピードは時速60km。ヘビ嫌いとは意外だった。冬眠中の「止め糞」、追跡する猟師の裏をかくためクマが自分の足跡の上を踏んで戻る「止め足」など、動物学者の文章とは一味違う沢山の挿話がヒグマを主役に北海道に生きる動物たちを浮かび上がらせる。

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photograph by Sports Graphic Number

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