「新陰流の刀法を実技面からかなり詳しく書いた」(まえがき)のが本書だ。著者は大学の現代心理学の教授で新陰流・武術探求会を主宰している。四百数十年も前の戦国時代に信綱を流祖とし、柳生宗厳(むねとし)に伝えられ、その子宗矩(むねのり)の代に徳川「御流儀」とされた新陰流。老人世代には講談や剣豪小説で“柳生流”とも呼ばれたおなじみの剣術。その「刀法が成り立つ根本原理を」語るのだが、武道教本ではない。ユニークな日本文化論を提示する思想書のおもむきだ。
岩波文庫に柳生宗矩『兵法家伝書』がある。巻末に武士や天狗が立ちあう図入り古文書が付く。図には「逆風」とか「天狗抄」などと技の名がつけられ、候文の説明が難しい。著者はこれら太刀筋を身体運動とその動きが持つ思想的な意味までを含めて詳述する。
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