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全ての痛みに終わりはあるのか? ~長谷川晶一・著『夏を赦す』~

2013/11/27

 元日本ハムファイターズの岩本勉投手は、どこかで後ろめたい気持ちを抱えながらマウンドに立っていた。陽気な笑顔と「まいどっ!」でお馴染みの威勢よい大声。燃え立つエネルギーを充満させ、マウンドで躍動した岩本は、記録よりも記憶に残る太陽のような投手だったはずだ。

高3夏の出来事を引きずってプロ生活を送った岩本勉。

 だが彼は高校最後の夏の出来事を引きずったままプロのマウンドに立ち続けていたという。本書は、そんな岩本勉と高校時代のチームメイト、そして家族やスカウトマンたちの証言によってあぶり出される喪失と蘇生の物語だ。

 平成元年の7月、岩本たち阪南大高校野球部は不祥事で甲子園への道を断たれた。後輩である2年生の野球部員が暴力事件を起こしたのだ。多くの部員は野球を奪われ、彼らは涸れるまで涙を流す。

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photograph by Sports Graphic Number

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