「今年で終わるかもしれない」と覚悟を決めて臨んだ。
だが早々と大記録を達成、今も3割前後の打率を保つ。
復活劇の裏にはオフの統一球の対策や独自の体調管理術、
そして、人に助言を求める事を厭わず、それを自らの
“引き出し”として活用する、ベテランの知恵があった。
だが早々と大記録を達成、今も3割前後の打率を保つ。
復活劇の裏にはオフの統一球の対策や独自の体調管理術、
そして、人に助言を求める事を厭わず、それを自らの
“引き出し”として活用する、ベテランの知恵があった。
稲葉篤紀は、プロ入り18年目の開幕を特別な思いで迎えていた。
「年も40になりますし、正直言って自分には後がない。今年で終わりかもしれない。それぐらいの覚悟を持ってシーズンに臨みました」
2000本安打まであと34本に迫っていたが、昨季の打率は2割6分2厘。自身過去最低の数字だった。
「今年も同じような成績だったらチームに迷惑をかけてしまう。2000本という節目の年でもありましたし、もしそれを達成して、成績が落ちたりすると、みんなに『稲葉、お疲れさん』みたいな感じで見られてしまうでしょう。だから、悔いの残らないような1年を送ろうと思ったんです」
2番バッターで迎えた開幕戦の第1打席、二塁打でつかんだ手応え。
人知れずそんな決意を抱き、キャンプで黙々とトレーニングを積んでいた稲葉に、栗山英樹新監督は、「開幕は2番で行く」と伝えた。ヤクルト時代も含め、ほとんど経験したことのない打順だった。
「バントで送ったり、足が速くて小細工もできる。それが2番打者のイメージだったんですが、監督にはこう言われました。『小細工は必要ない。思い切って、好きなように、稲葉らしくやってくれ』と。それですごく気持ちが楽になったんです」
2番に座って迎えた開幕戦。初回、西武先発の涌井秀章から先頭の田中賢介が四球を選び、無死一塁の場面で、稲葉のシーズン第1打席が回ってきた。そしてカウントがツーボール・ノーストライクになったところで、稲葉の脳裏に、「思い切って、稲葉らしくやれ」という栗山監督の言葉がよぎった。
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photograph by Shigeyoshi Ohi