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<想いを交わすバッテリー> 谷繁元信&中日投手陣 「18.44mの以心伝心」

2012/01/23
マウンドの18.44m先で、捕手は投手と対峙する。
1球ごとにサインを送り、身振り手振りで指示を出す。
バッテリー間の声なきコミュニケーションは、いかにして
成立するのか。昨季、安定した投手力でセ・リーグを制した
ドラゴンズの女房役に聞いた。

 18.44mも離れている。

 にもかかわらず、会話は成立してきた。

 野球マンガ『巨人の星』で星飛雄馬と伴宙太が、『侍ジャイアンツ』では番場蛮と八幡太郎平が、そして『ドカベン』で里中智と山田太郎が、試合中、マウンドとホームの間で会話を交わしてきた。

 そんなことが、現実には可能なのか。

 ドラゴンズの谷繁元信は、こう言った。

「できる相手もいるし、できない相手もいるかな。ウチの吉見とは、そういう感覚で会話するようになってきましたね。もう、サインの中だけで(会話が)できますよ。アイツが、なぜ僕がこのサインを出しているのか、その理由までもお互いの呼吸の中で感じ取って投げてくれるようになりましたから……」

18.44m離れたまま、吉見と谷繁が交わした“会話”の中身。

 たとえば、去年の日本シリーズ第2戦。

 吉見一起と杉内俊哉が投げ合い、0-0のまま迎えた5回裏、ホークスの攻撃。ツーアウトで、一塁に川崎宗則を置いて、バッターは内川聖一。

 初球、谷繁は外のボール気味のストレートを要求して、これを内川がファウル。もし初球から川崎が走ってきたとしても、外角高めの、ボール気味の速い球ならセカンドで刺せるという計算が、谷繁にはあった。

 2球目を投げる前、吉見は一球、牽制のふりをして、さらに一球、早い牽制を入れた。そして2球目、同じようなストレートを今度は内川に見逃されて、ボール。

 3球目。ここは変化球、スライダーかフォークをインコースに見せたいところではあるが、敢えてストレートをインコース、ボール気味に低く要求したら内川が見逃し、審判がストライクを取ってくれた。これで、ワンボール、ツーストライクと追い込んだ。

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photograph by SPORTS NIPPON

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