プレミアリーグの時間BACK NUMBER
想定外の強固な守備でミランを撃破!
トッテナムの快進撃はどこまで続く?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAP/AFLO
posted2011/03/19 08:02
ミランのエース、ズラタン・イブラヒモビッチ(右)に決定的な仕事をさせなかったトッテナムのセンターバック、マイケル・ドーソン(左)。試合後、「僕らはとても攻撃的だけど、今日は違う一面を見せた」とチームの守備を称えた
「賞味期限切れ」と「高額な劣等品」と言われた2選手。
しかし、結果的にチームは90分間の大半で守勢を強いられた。アレシャンドレ・パト、ズラタン・イブラヒモビッチ、ロビーニョと並ぶ3トップの後方で、クラレンス・セードルフが巧みに糸を引くミランの攻撃に押された。にもかかわらず、トッテナムは苦手であるはずの守りを最後まで全うした。
なかでも活躍が際立っていたのが、開幕当初は期待度が低かった2人の選手であることも特筆に価する。1人はウィリアム・ギャラスだ。昨夏にアーセナルからフリーで移籍した33歳のCBには、選手として「賞味期限切れ」との見方が強かった。だが、昨秋からベテランらしい存在感を発揮し始め、この試合では26分に見せたゴールライン上でのクリアをはじめ、要所で危機を解消し続けた。
もう1人はサンドロ。
彼はグループステージではCL登録メンバーにすら入っていなかった。開幕前に10億円台の移籍金を要した21歳のブラジル人MFに対しては、トッテナム・サポーターの間でも「高額で劣等品をつかまされたのでは?」という疑いの声があがっていた。ところが、正ボランチのトム・ハドルストンの長期欠場もあって登録された決勝トーナメントでは、ミランとの第1レグで上々のCLデビュー。
第2レグでは、力強さと機動力を武器にパスカットを繰り返し、初戦を上回る貢献を見せた。
現在5位のプレミアではマンC、チェルシーが視界に入ってきた。
意図したものではないとはいえ、戦況に応じて守り勝ちを成し遂げる能力を備えていることを証明したトッテナム。攻撃陣の層の厚さには以前から定評があるため、総合的にも十分な戦力を備えているということになる。これは、プレミアでのトップ4争いを占う上でも重要だ。
トッテナムにとっての最優先課題は、CL優勝ではなく2年連続のCL出場権獲得にある。守備に不安を抱えるチームが、安定性が物を言うプレミア上位争いを勝ち抜くことは難しいと思われたが、ミラン戦を経てトッテナムの信憑性は俄然高まったと言える。
プレミアでのトッテナムは、第28節を終えて5位につけている。4位チェルシーとの差は3ポイント。3位マンチェスター・シティとの差も5ポイントでしかない。4月には両軍との直接対決も残されている。チェルシーは、フェルナンド・トーレス加入後のシステム変更が難航中。シティは、コロ・トゥーレのドーピング問題でレギュラーCBを失うことになる。