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今季の阪神を牽引するのは若虎軍団!?
世代交代を予感させる若手の大躍進。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2011/02/27 08:00

今季の阪神を牽引するのは若虎軍団!?世代交代を予感させる若手の大躍進。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

2月13日、ヤクルトとの練習試合に登板した榎田は、1回無安打無失点と好投を見せた

 2月20~23日まで安芸阪神キャンプを見た。この時期は新人の評価が定まっておらず、私たちマスコミにとっては“書き得”の時期。澤村拓一(巨人)、斎藤佑樹(日本ハム)、大石達也(西武)、駿太(オリックス)、美馬学(楽天)がスポーツ各紙でよく見かける名前だ。

 この新人“書き得”現象は毎年のことで、昨年は菊池雄星(西武)の一挙手一投足に報道の限りを尽くしたと言っても過言ではない現象が起きた。その過熱ぶりの陰で荻野貴司、清田育宏(ともにロッテ)、中澤雅人(ヤクルト)、大島洋平(中日)、秋山拓巳(阪神)、加賀繁(横浜)たちは放って置かれた。彼らの活躍と菊池の故障・離脱は見事に明暗のコントラストを描いた、と言ってもそれは過去のものとして顧みられず、今現在、斎藤佑樹の一挙手一投足にマスコミが注目していることは周知の通りである。

 斎藤人気の過熱ぶりを見ると、野球ファンは皆、沖縄県名護に行っているのではないのかと錯覚を起こしそうになるが、高知県安芸にも大勢のファンが押し寄せている。主役はもちろん球界ナンバーワンの動員力を誇る阪神だ。19日(土曜日)、20日(日曜日)、21日(月曜日)と紅白戦が行われ、19日が1万3000人、20日が1万2000人、21日は平日にもかかわらず7000人の来場と発表された(安芸市営球場の観客収容人数は5000人なので、これはキャンプ場を訪れた総人数のことだろう)。スタンドはファンの熱で埋め尽くされ、トイレなどは長蛇の列ができるほどの有様。

高卒4年目の高濱卓也、大器開花の予感。

 紅白戦だが、20日の試合で注目したのが紅組の2番・ショートでスタメン出場した高濱卓也だ。'07年の高校生ドラフトで1巡指名された内野手で、横浜高時代は1年春に既にレギュラーポジションを獲得。私が初めて見た'05年4月16日の桐蔭学園戦では6番・サードでスタメン出場していた。名門中の名門の横浜高で、4月からスタメン出場する1年生は珍しい。

 しかし、プロ入り後の3年間はまったく精彩を欠いた。'08年=出場なし、'09年=28試合(打率.194)、'10年=39試合(打率.195)という記録は一軍ではなく、二軍でのものである。腰、首、両脛(すね)の故障が低迷の主な原因だが、バッティングにも問題があった。高校時代は学年を経るごとにレフト方向への打球が多くなり、3年時にはほとんど引っ張る打席を見なくなったのだ。

 背番号36が今オフに66に格下げされたことが奮起するキッカケになったのか、現在の高濱は積極的な好球必打が持ち味になっている。3日連続の紅白戦では、19日が3打数3安打1打点、20日が3打数1安打、21日が3打数2安打の計9打数6安打、打率.667の大当たりで、開幕一軍を強烈アピールしている。

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