- #1
- #2
ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
「本田圭佑は興味深い候補だが…」トルシエと“最も近い記者”最期の対話「ありがとう、ありがとう」「君が日本と私をつないでくれた」《追悼・田村修一さん》
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2026/08/07 11:03
田村さんは数十年にわたりトルシエと交誼を結んできた。最後となってしまったインタビューでもトルシエは忌憚のない意見を聞かせてくれている
「それよりも、自分について書いてみてはどうか。自分の人生が終わりに近づいていること、世界中でサッカーを体験してきたこと、旅をしてきたこと、日本の成長を見守ってきたことを語るんだ。証人であったことを伝えるんだ」
——そう、そうですね。すべてを書くことが難しければ、声だけを録音しておくということもできるので、今考えています。でも、とにかく自分は落ち着いています。
「そうか。それが一番大切なことだ。できる限り前向きな気持ちでいること、精神的な強さが重要だ」
ADVERTISEMENT
——ええ。気持ちはとても穏やかで、静かに日々を送っています。パニックにもなっていないし、少しは落ち込むこともありますが、それほどでもないんです。なぜかはわかりませんが……。
「そうだ、それが強さだよ。強さだ。今、必要なものは何かあるか?」
——あなたのコラムを出すのが遅れていることが残念ですが……。
「そんなのはどうだっていいんだ。そんなことで君が疲れる必要はない」
ずっと連絡してくれた唯一の人物が君だ
——いや、でもやらなければなりません。続けたいんです。
「君のおかげで、私が日本とつながり続けていることがわかるかい? 毎回、こうしてコラムを再起動してくれたのは君だ。日本との関係において、君が私を生かしてくれたんだ。最初から今まで、ずっと連絡を取り続けてくれた唯一の人物が君だ」
——最初のトレーニングを見たときから、あなたがとても有能で、特別な人だと感じていたからです。他の人たちと少し違う、日本のために何かをできる人だと。
「ありがとう、ありがとう。君は私にとって兄のような存在だ。妻のドミニクにとっても、子どもたちにとっても、君は兄や伯父のような存在だ」
——ありがとう、私からしてもあなたの家族は私の家族です。
「なんと言えばいいのかわからないが、いずれにしても、日本を出発する前に君に会いに行くつもりだ。必ず。このあいだ送った食べ物はまだあるかい? また送るよ」
——ああ、スープが本当においしかったです。
「わかった。良かった。よし、頑張れよ。すぐにハグをしに行くよ」
——メルシー、メルシー、フィリップ。
〈了/はじめから読む〉

