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「ボールを蹴った瞬間、ヤバい」”W杯で初めてPKを外した日本人”が明かす南アW杯PK失敗の真相「俺一人のせいで負けた。その責任ばかり感じて」
text by

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byNaoki Nakanishi/JMPA
posted2026/06/29 11:02
2010年南アフリカW杯パラグアイ戦のPK戦で3人目のキッカーとしてペナルティスポットに向かう駒野友一。“W杯で初めてPKを外した日本人”が明かした真相とは?
しかし、報道陣の誰も声をかけることができなかった。俯いているのに、はっきりわかる。泣いて、拭ってを何度も何度も繰り返した駒野友一の顔は、あまりにもボロボロだった。
「お疲れさまです……」
振り絞った小さな小さな声だけを残して、勇気あるサイドバックはミックスゾーンを歩き去った。
「PK戦の映像をフルで見るのは初めてかも」
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2025年師走、駒野が当時の心境を明かしてくれた。
「試合が終わって、ロッカールームに戻って、少しだけ落ち着いたんですけどね。犬飼さん(犬飼基昭、当時日本サッカー協会会長)が『お疲れさま。気にするなよ』と声をかけてくれて。それで、また涙が込み上げてしまった。このままミックスゾーンで立ち止まってもしゃべれないなと思って」
ノートパソコンを開き、あらためて南アフリカでのPK戦の映像を見てもらった。
誠実な人である。この手の取材は、もう数えきれないほど受けてきているはずなのに、嫌な顔ひとつしない。
「PK戦の映像をフルでちゃんと見るのは大会以来初めてかもしれない。スタンド、こんなに人が入っていたんですね。懐かしい。いや、懐かしいじゃないな。僕の見方が変わりましたね。現役だった頃は、悔しさを晴らすために、もう一度この舞台に立ちたいと思い続けていました。でも、今は選手ではなくなりましたから。コーチとして技術的な視点で見てしまいます」
映像は、パラグアイ戦の延長戦終了直後から始まった。
「延長戦が終わるまで、PKのことなんて全然考えていませんでした。グループステージの段階から堅守を武器に勝ち上がったチーム同士の対戦なので、シュートが少ない展開になりましたけど、僕たちは最後まで得点を狙っていた。チーム内でも『このまま守りきるぞ』みたいな声は出ていなかったんですよね」
日本のベンチ前に輪ができる。水分を補給し、スタッフによるマッサージで体をほぐす選手たちを見つめながら、岡田武史監督が力強く発表した。
1番、遠藤!
2番、長谷部!
3番、駒野!
その声を聞いて、駒野は黙って頷いた。指名される予感も、覚悟もあった。“実績”があったからだ。
「PKキッカーに選ばれるだろうなとは思っていた」
グループステージ第3戦でデンマークを破り、決勝トーナメント進出を決めて以降、日本代表はトレーニングの最後に必ずPK練習を実施した。パラグアイ戦本番と同じロフタス・バースフェルド競技場のピッチで行われた前日公式練習でも、その締め括りとして選手全員がゴール前に集められた。
ゴールマウスに立つのは、川口能活、楢崎正剛、川島永嗣。そんな日本屈指の守護神を目の前にしても、駒野のキックが精度を失うことはなかった。右足を振るたびに、ボールがゴールネットを擦る音がスタジアムに響く。その背後では、指揮官がメガネを光らせていた。

