ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
「中盤の選手がもうひとり必要だ」トルシエが日本代表壮行試合で予感したこと「アタッカー4人同時起用は最善ではない。現実を反映しない試合だった」
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2026/06/12 17:00
アイスランド戦を現地で観戦したトルシエは最強攻撃陣を並べることより、「経験豊富な中盤の選手」の重要性を説いたが……
それから吉田麻也への配慮もあった。彼のキャリアを称えたセレモニーだ。つまりどちらかと言えば、戦いに入る前の儀式的な意味合いの強い試合だった。ちょっと日本的だと思えたのは、観客に配慮してチームのほぼ全員にプレーの機会を与えたことだ。吉田も含めてチームの全員がひとつになっていることをサポーターに示した。W杯の準備試合というよりも、ひとつの儀式といえる試合だった。チームがこの状態でW杯に臨むのであれば、準備は整っていないと言わざるを得ない」
——戦う態勢にはなっていないと。
「そうだ。この試合からW杯を占うことはできない。森保はこの試合をラボ(実験室)として活用した。だから遠藤航と冨安健洋にプレーの時間を与えたし、長友佑都も途中から起用した。彼らの状態を試合で確認するのは森保にとって重要なことであり、それは選手の側も同様だった。そうした実験の場として森保はこの試合を利用した」
前半は予測可能な個人プレーばかりだった
ADVERTISEMENT
——セレモニーとラボの試合であったと。
「前半に森保が敷いたのは、このチームで取りうる、最も攻撃的な布陣だった。彼がそこで狙ったのは、相手のバランスを崩すことだった。左サイドに伊東純也と中村敬斗、右サイドが久保建英と堂安律。この4人は、相手のバランスを崩すうえで最もキーとなる選手たちだ。最強の攻撃陣といえる」
——それが機能しなかった。
「前半を見る限り、チームは流動性と連動性を欠きあらゆるプレーは個人に特化していた。コレクティブなプレーはまったく見られず、それぞれが個の力を発揮しようとしただけだった。スピードを欠いたプレーは予測可能で、選手は『自分たちはアイスランドよりも優れている、だからこれでいい』と満足しているように見えた。相手への圧力も不十分だった。
そのうえアイスランドは低い守備ブロックを敷いて頭脳的に守った。だから日本は、ボール支配は何の問題もなかったが、自分たちのリズムで流れを引き寄せることはできなかった。唯一のチャンスは素早いトランジションからカウンターを仕掛けたときだけだった。たしかにカウンターアタックは危険だったが、残りの80%を占めたボールを保持しての攻撃で、日本が見せたのはスピードの欠如と予測可能なプレー、過剰なまでの個人プレーだった。それではチームはうまく機能しない」

